2663外来で見逃さない甲状腺疾患
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12 はじめに 甲状腺機能異常症の定義積極的に疑って甲状腺機能検査をオーダーすることが第一!触診の要領患者さんに自然にして(顎を上げないで)もらって,正面から両手の親指を甲状軟骨の下気管の両側に軽くあて,主に全体の大きさを把握.唾を飲んでもらうと甲状腺が上下に動くので,正常大の甲状腺でも触知できる.その後,患者さんの後ろに回って,両手の中3本の指で触り,主に結節の有無を確認する.エコーがあれば座位でエコーをしながら触ると,(自身の)触診技術の確認もできる.甲状腺疾患は頻度が高いにもかかわらず,甲状腺機能検査が一般血液検査に含まれないことから,積極的に疑って甲状腺機能検査をオーダーしないと見逃してしまう.逆に言えば,血中甲状腺ホルモンを測定さえすれば,無症候性の潜在性甲状腺機能異常症でも発見できる.甲状腺ホルモンは全身の新陳代謝を調節することから,顕在性の機能亢進症と機能低下症では対照的な症状が出現するし,それぞれに特徴的な症状だけでなく,不定愁訴と思われがちな症状でもその組み合わせによっては甲状腺機能異常症の存在が疑われ,検査オーダーのきっかけとなる.また,一般血液検査にも甲状腺ホルモンの過不足による影響があらわれ,複数の異常の組み合わせで甲状腺機能異常症が想起される.さらに,基準値内の変化でも,その組み合わせを検知して甲状腺機能異常症が発見できるAI(artificial intelligence)による診療補助ツールが開発されつつある.一方,多くの甲状腺疾患は甲状腺腫を呈することから,日頃から甲状腺の視診・触診を心がけることが大切である.最近では,クリニックでも超音波診断装置を有している施設も少なくないため,甲状腺腫瘍の検出に力を発揮する.救急の現場では,甲状腺クリーゼや粘液水腫性昏睡など,専門医へ紹介またはコンサルトすべき症例を早期に見極めることも重要である.甲状腺機能異常症とは,一言でいえば血中甲状腺ホルモンが基準値よりも多い,または,少ないことである.前者を甲状腺中毒症(thyrotoxicosis),後者を甲状腺機能低下症(hypothyroidism)という.甲状腺機能低下症の対義語として,甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)という病名もあるが,厳密いうと,「甲状腺」の「機能」が「亢進」していなくても血中甲状これ大事積極的に疑って甲状腺機能検査をしよう 甲状腺機能検査について説明!!|第1部| 甲状腺疾患を知る甲状腺疾患とはどんな病気?

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