甲状腺疾患を知る1 甲状腺疾患とはどんな病気?第1部第2部第3部第4部第5部IIIIIOIOI3甲状腺ホルモンが組織に対して働くときは遊離型で作用する!甲状腺は脳下垂体から分泌されるTSHによって調節される.腺ホルモンが高いことがあり(破壊性甲状腺炎や甲状腺ホルモン薬の過剰摂取など),ワンポイントの結果ではその区別がつかない場合が多いことから,とりあえず「甲状腺中毒症」とされる.甲状腺ホルモンは甲状腺に集められたヨウ素を原料として甲状腺でのみ合成・分泌される.甲状腺ホルモンには1分子にヨウ素が4個結合したサイロキシン(T4)と3個結合したトリヨードサイロン(T3)があるが(図1),100%甲状腺で生成され,血中濃度が高いのはT4であり,T3の80%はT4から生成されることから,「甲状腺」の「機能」(働き)という観点からみれば,血中T4濃度を測定するのが合理的である.T4やT3は血中ではその大部分がT4結合グロブリン(T4 binding globulin;TBG)やアルブミンといった蛋白質と結合しているが,ごく一部は遊離型として存在する.甲状腺ホルモンが組織に対して働くときは遊離型で作用するので,結合蛋白量に依存しない遊離(free)T4(FT4)や遊離T3(FT3)を測定する方が直接的である.逆に,総(total)T4(TT4)や総T3(TT3)を測定する場合はTBGとセットで測定して評価する必要がある.お金に例えれば,日本銀行が甲状腺,地方銀行が結合蛋白,キャッシュが遊離型ホルモンと言える.さらにこじつければ,給料はドル(T4)で発行されるが,日本で使うときは円(T3)に換金してから…という感じか.さて,上述のT3よりT4,という話と合わせて,甲状腺ホルモンとして1項目を測定するのであれば,FT4を選択する.さて,甲状腺(ホルモンの合成・分泌)は脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)により調節されている(図2).したがって,TSHの過不足により甲状腺機能異常症が生じ,これらは中枢性甲状腺機能亢進症または低下症とよばれるが,その頻度はむしろ低く,甲状腺自体に問題がある原発性甲状腺機能異常症の方が一般的である(頻度が高い).血中甲状腺ホT4の構造T3の構造HOHO図1 T4,T3の構造I=ヨウ素COOHCH2-CH-NH2COOHCH2-CH-NH2これ大事
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