2663外来で見逃さない甲状腺疾患
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甲状腺疾患を疑う第1部第2部第3部第4部第5部 消化器症状 ① 便秘1 よくみられる症状とは?41「やる気が出ない」の出現頻度は,低下症で30~57%(中毒症で35~64%,機能正常では19~45%)であった.中毒症でも多いのは,易疲労性や倦怠感からきているのかもしれない(「気分が塞ぐ」などの質問項目の方がより適切であったかもしれない).低下症によるうつは,産後うつ病や認知症などとも間違われやすい.③ 集中力低下甲状腺中毒症でも低下症でもみられる.アンケートによる「集中できない」の出現頻度は,甲状腺中毒症で26~54%,機能低下症で24~50%(機能正常では16~39%)であった.④ 不眠,眠気甲状腺中毒症では不眠に,機能低下症では傾眠傾向となる.アンケートによる不眠の出現頻度は,甲状腺中毒症で23~46%(機能低下症で16~37%,機能正常では16~36%),傾眠傾向の出現頻度は,低下症で26~49%(中毒症で25~50%,機能正常では18~43%)であった.中毒症でも多いのは,夜間不眠の結果,昼間眠いのかもしれない.⑤ 記憶力低下甲状腺ホルモンは中枢神経系の発達に必須で,胎児,新生児におけるホルモン不足は非可逆的な障害を起こす.成人の甲状腺機能低下症では精神神経活動が低下し,記憶力は低下し,物忘れが多くなる.アンケートによる物忘れの出現頻度は,低下症で29~63%(中毒症で24~52%,機能正常では21~53%)であった.⑥ 暑がり・寒がり暑がりは甲状腺中毒症の,寒がりは機能低下症の,それぞれ典型的な症状とされている.アンケートによる暑がりの出現頻度は,甲状腺中毒症で59~76%(機能低下症で36~57%,機能正常では37~63%),寒がりの出現頻度は,低下症で51~73%(中毒症で28~57%,機能正常では36~62%)であった.機能正常と対比したROC解析によると,甲状腺中毒症における暑がりはAUC=0.624,機能低下症における寒がりはAUC=0.591であり,いずれもそれほど高くない.暑がり・寒がりは個人の主観によるところが大きく,地域差もありそうである.便秘は甲状腺機能低下症の主症状である.末梢型甲状腺ホルモン不応症であるRTHαでは高度の便秘を来たす.アンケートによる便秘の出現頻度は,低下症で24~42%(中毒症で10~23%,機能正常では16~34%)であった.

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