甲状腺疾患を治療する第1部第2部第3部第4部第5部① 病気について 患者への説明慢性甲状腺炎(橋本病)は,おもに遺伝因子(体質など)が原因で免疫の異常が起こり,甲状腺に対する抗体ができることによって,甲状腺に慢性の炎症が起こる病気です(図7).甲状腺機能低下症の原因になります.中高年の女性に多く,5人にひとりがその抗体を持っています.橋本病は甲状腺機能低下症の原因のなかで最も多い疾患(病気)です.甲状腺に対する自己抗体(TgAb,TPOAb)が甲状腺に慢性の炎症を引き起こします.2 治療法を決定し説明する食物中のヨウ素(昆布,ひじき,こぶだし汁に多く含まれる)*甲状腺ホルモンの原料図7 橋本病下垂体TSHFT4FT3甲状腺ホルモンのどぼとけ甲状腺自己抗体(甲状腺を刺激する抗体=TrAb, TSAb)89橋本病では甲状腺が全体に腫れて大きくなります(びまん性甲状腺腫)(図8).しかし,甲状腺機能が正常であれば甲状腺腫以外の症状はみられません.橋本病でも生涯,甲状腺機能に異常が認められないことが少なくありません.一方,橋本病が進行して甲状腺ホルモンが不足してくると,甲状腺機能低下症の症状があらわれます.ただ,甲状腺機能低下がみられても,自然に回復する場合があります.また,一時的に急性の炎症を起こして,甲状腺の細胞が一気に壊れ,蓄えられていた大量の甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出し甲状腺炎―橋本病
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