12A▲頭頸部診療とエコー 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域のエコーでは,触診の延長として,頸部から顔面にかけて,広い領域を対象とし,また深さに関しても皮膚,皮下組織から,咽頭,副咽頭間隙,椎前部から上縦隔といった深部までの情報を得なくてはならないため,それらに対応できる診断装置と探触子が必要である.さらに,血流を表示・計測して診断するカラードプラモードは,様々な頭頸部疾患のエコーにおいて大きな情報源となるため,搭載されていることが望ましい.そのほか,組織の硬さを診断する「組織弾性イメージング」も何種類か開発され,疾患や病態によっては非常に有用なモードに位置づけされつつあり,疾患の鑑別や手術のための情報提供に役立っている.エコー診断装置はおもに,「据え置き型」と「ポータブル」に分けて考えられてきたが,最近の傾向として「据え置き型」も多機能を有しながら軽量・小型化し,「ポータブル」も持ち運び可能ながら,従来の「据え置き型」とほぼ同等の機能や画質になり,両者の境界線がなくなる方向にある.検査室や外来に置いたまま検査する場合は,検査に必要なスペースを十分確保し,定期的にメインテナンスを行いいつでも素早く安定した検査ができる環境を整えることが重要である.また,病院内を移動して使用する場合は軽量でバッテリー駆動が可能な機種を選択し,スムーズに移動できる安全な架台に載せたほうが使用しやすい.一方で在宅診療など病院外に持ち出す場合はモバイルやタブレット型エコー,コードレス探触子などが有用である.エコーの応用範囲が広がるにつれてその使用方法や目的も多様化しつつあり,それぞれに対応した機器の選択が重要である.通常は体表用で中心周波数7.5 MHz以上の高周波数探触子を選択する.探触子の視野幅は4 cm前後であまり厚みがなく軽くて持ちやすい形状のものが使用しやすく,下顎骨,鎖骨,甲状軟骨などによる頸部の凹凸に合わせた操作に適している.体表用探触子の開発改良に伴い,1本の探触子のもつ周波数の幅が広がり,中心周波数が10~11 MHzで,周波数を切り替えることで頸部の浅い部位から深いところまで繊細な画像で観察可能なものが増えてきている.探触子の形状としては,基本的には体表用リニア型探触子があれば頭頸部領域のほとんどをカ b 探触子の選択基礎編基礎編神奈川県立がんセンター頭頸部外科/古川まどか 1 検査装置の選択と準備 a エコー診断装置頭頸部エコーの実際と頭頸部診療におけるエコーの活用
元のページ ../index.html#2