POINT3592患者さんにはこう伝えるADPKDでは,髄質の構造異常から浸透圧勾配の破綻が生じ,尿の濃縮力が低下することが知られています.そのため,やや脱水傾向になることが多いと考えられますが,腎機能がある程度保たれているうちは,少々の脱水傾向になっても生活に困ることはありません.しかし,トルバプタンを服用すると5 L程度の尿が出ていくので,水分摂取が十分にできていなければ,容易に脱水に陥ります.そこで,患者さんには,水分を摂る習慣をつけてもらうように指導します.水分摂取の習慣がない人は,少々のどが渇いても,無意識に我慢してしまいます.その間に腎臓が尿を濃縮しています.実は「口渇感」よりも先に「尿の濃縮」が起こるからです.そのため,口渇感を感じた時には,すでに尿の濃縮が起こっているので,そうならないようにすることが大切です.① いつも身近に水分を用意しておき,のどの渇きを少しでも感じたら飲むようにしましょう.② デスクワークの場合は,机の上に飲み物を置いておくようにするとよいでしょう.③ 最初は,午前と午後に500 mLのペットボトルを1本ずつ飲み干す程度でもかまいません.④ 外で仕事をされる方は,1日で2~3本飲めればよいでしょう.⑤ トイレに行った後に水分を摂るように心掛けます.尿として出た水分を補給する感覚です.⑥ 食事の時の水分を,今までの倍にするのもよいでしょう.⑦ コーヒーやお酒には利尿作用があるので,水分としてカウントできません.より水分が必要になるので注意しましょう.⑧ 最初は1 Lであっても,徐々に増やして2 Lまでくれば,それが新しい習慣になります.だんだんと尿の色が薄くなっていくことに気づくはずです.⑨ 3 L飲めるようになっていれば,「水分を摂る」習慣は十分に身についています.⑩ ただし,飲みすぎもよくない場合がありますので,決して無理をせず,「のどの渇き」という感覚を頼りに水分摂取を心掛けましょう.水分摂取を習慣づける入院前の患者さんに何を心掛けてもらう?トルバプタンは入院して投薬を開始することになりますが,難病申請などの手続きもあり,入院前には少し準備期間があります.その間に,患者さんに心掛けてもらいたいことがあります.
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