Ⅰ表皮の構造と水分保持および物理的バリア1皮膚の構造と機能1.表皮の代謝と表皮角化細胞2.表皮の物理的バリア2分を保持すること,体温を調節すること,知覚を司ることなどがあげられる.本項では主に一般的な皮膚の構造と機能との関連について述べ,成人と小児の違いについても一部言及する.の塊として角質層に到達し,その後に垢として脱落する.この表皮角化細胞のターンオーバーは4~8週間くらいの期間で行われる.部位にもよるが表皮の厚さはおおよそ0.2~0.3 mmで,そのうち角層の厚みは約0.01~0.03 mm程度であり,小児ではこれが若干薄い.皮膚の形態保持にはケラチンが不可欠であり,表皮バリアの中心となる.表皮の物理的バリアは二重であり,外側にあるのが角質層の細表皮は外界からのバリアとなり,水分保持の面でも重要である.真皮は抗張力をもたらす膠原線維と弾力性をもたらす弾性線維からなり,皮膚をしなやかで強靭なものにする.皮膚は免疫学的なバリアでもあり,表皮に存在するランゲルハンス細胞は樹状突起を伸ばして外来抗原を取り込み,抗原提示をする.皮膚の細菌叢は人によって様々だが,同じ個人においては時間の経過に伴う細菌叢の変化は少ない.皮膚はわれわれの体と外界との境にあり,外界から押し寄せてくる様々な脅威からわれわれの体を守ってくれる.皮膚の主な役割としては,外界からの物理的,さらには免疫学的なバリアになること,紫外線から体を守ること,水皮膚は表皮と真皮から成り立つ.表皮(図1)は主に表皮角化細胞(ケラチノサイト)によって占められ,表皮角化細胞の細胞骨格は主に「ケラチン」という蛋白質から構成される.表皮角化細胞は基底層にて分裂し,下から上に押し上げられるように有棘層,顆粒層へと上行し,ブロックのように積み重なっていく.顆粒層に至ると表皮角化細胞は角化のプロセスが進行するとともに核を失い,最終的にはケラチン第Ⅰ部◦知っておきたい小児の皮膚の診かた・考えかた
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