Ⅱ真皮の構造と皮膚の付属器4.メラノサイトと紫外線防御1.真皮を構成する線維と細胞外マトリクス5.ランゲルハンス細胞2.線維芽細胞および免疫担当細胞4表皮には表皮角化細胞以外に,メラノサイト,ランゲルハンス細胞(Langerhans cell)さらに触覚を司るメルケル細胞(Merkel cell)といった細胞が存在する.メラノサイトはメラニンを産生する細胞であり,基底層に存在し紫外線防御を司る.メラノサイトはチロシンを原材料として,「メラノソーム」という細胞内の小器官でメラニンを産生する.チロシンは代謝され,ドーパ,ドーパキノンなどを経てメラニンへと変化するが,この最初の段階であるチロシンをドーパさらにはドーパキノンへと誘導する酵素がチロシナーゼである.このチロシナーゼが欠損するとメラニンが産生できなくなるため,チロシナーゼの合成に関わる遺伝子の異常は先天性白皮症につながる.メラニンには褐色~黒色のユーメラニン(真メラニン)と黄色~赤色のフェオメラニンの(亜メラニン)2種類がある.この2種類のメラニンの量や割合がわれわれの肌の色を決め,表皮の下にあるのが真皮である(図2).真皮の厚さは部位にもよるが大体1~4 mmであり,乳児の真皮の厚さは大人の半分程度しかない(図3).真皮は主に2つの線維,すなわち膠原線維と弾性線維から構成される.割合としては膠原線維が圧倒的に多く,真皮重量の7割程度を占めるとされ,弾性線維は数パーセント程度である.膠原線維の主成分はI型コラーゲンであり抗張力の元となる.一方,弾性線維の主成分はエラスチンであり,皮膚に弾力性をもたらす.これらの線維が皮膚の強靭さとしなやかさを産み出している.日本人ではユーメラニンが主体となっている.メラノサイトは周囲の基底層の表皮角化細胞に樹枝状に手を伸ばした形状をしているが,メラニンの産生工場であるメラノソームはこの樹状突起の部分に主に存在する.メラニンは産生されると樹状突起を介して周囲の基底細胞の核の上方に配置されて核帽となり,核内のDNAを紫外線から防御する役割を果たす.ランゲルハンス細胞は有棘層に存在する抗原提示細胞であり,骨髄に由来する樹状細胞の一種である.ランゲルハンス細胞は表皮内に樹状突起を伸ばし,その先端は顆粒層のタイトジャンクションを超えて,角層直下にまで及ぶ.こうした樹状突起の伸長により,角層を超えて侵入してくる様々な外来抗原を取り込む.電子顕微鏡で観察するとテニスラケットに似た形状のバーベック顆粒をもつことで有名であるが,その機能は明らかではない.真皮にはこのほか様々な細胞外マトリックスが存在する.細胞外マトリックスの多くは多糖類と蛋白質の複合体である糖蛋白であり,中でもプロテオグリカンがよく知られている.プロテオグリカンは長い鎖状の核となる蛋白質に多数のムコ多糖類であるグルコサミノグリカンが結合したものである.グルコサミノグリカンの代表的なものとしてヘパリンがあり,このほかヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸といったよくサプリメントに含まれるムコ多糖があげられる.これらは保湿に重要であるため,保湿薬や化粧品の成分などとして広く用いられている.真皮に主に存在する細胞は,線維芽細胞である.線維芽細胞は膠原線維,弾性線維,細胞外第Ⅰ部◦知っておきたい小児の皮膚の診かた・考えかた
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