2671やさしい小児の皮膚科
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1乳児湿疹・おむつ皮膚炎 Ⅰ乳児湿疹めん新生児痤瘡は面ぽう皰2.臨床症状を形成することは稀であり,日本におけるいわゆる「乳児湿疹」という概念は,乳児期特有の湿疹・生理的変化として,新生児期からの痤瘡を含む脂漏性変化を示すことが多い.生後2か月以降,脂漏部位である頭部・顔面や間擦部だけでなく,湿疹病変の分布が拡大した場合,また瘙痒を伴う場合は,アトピー性皮膚炎の診断を検討すべきである.生後初めての皮膚トラブルとして生後2週頃から新生児痤瘡を生じることがある.新生児痤瘡は,健康な新生児の20%以上に生じ,生後3か月以内に一過性に軽快する場合が多い3).小さな丘疹を顔面に生じる.頸部や上半身に生じることもある.86第Ⅱ部◦知っておきたい小児の皮膚疾患⿟「乳児湿疹」は,広義では乳児期に生じた湿疹の総称として用いられることもあるが,狭義では新生児期からの痤瘡を含む脂漏性変化を指すことが多い.⿟アトピー性皮膚炎に移行する場合もあり,分布の拡大とかゆみがあれば,早期介入して炎症をコントロールする.⿟おむつ皮膚炎は,時間がたった排泄物,また水様便でおむつ内がアルカリ性に傾き,浸軟と摩擦で皮膚バリア障害を生じた刺激性接触皮膚炎である.⿟おむつ皮膚炎は凸面に生じ,乳児寄生菌性紅斑(皮膚カンジダ症)はしわに生じやすい.開口部や指趾にも皮膚炎があれば亜鉛欠乏症を鑑別する.乳児期に生じる顔面を中心とした湿疹を総称して「乳児湿疹」と呼ぶことが多いが,日本の教科書や洋書において明確に定義づけたものはない.生後2~3週から2か月くらいまでは,いわゆる「乳児湿疹」と総称される様々な湿疹あるいはそのほかの生理的皮膚変化を起こしやすい時期である1).広義には新生児痤瘡(図1a),新生児中毒性紅斑,汗疹,乳児脂漏性皮膚炎(図1b),アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎などを含むとする考えもあり,一方でアトピー性皮膚炎の確定診断前の状態を示す際にも使用される2).一方,海外の論文で“infantile ecze-ma”を検索すると,基本的にはアトピー性皮膚炎と同義として記載されている.A 湿疹・皮膚炎群1.疾患概念

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