第Ⅱ部◦知っておきたい小児の皮膚疾患こううん暈3.鑑別診断4.治療と経過 図1 新生児痤瘡と乳児脂漏性皮膚炎a:新生児痤瘡,b:乳児脂漏性皮膚炎.痤瘡と同時期(早い場合は生後1週頃)から被髪頭部や眉毛部,前額部といった脂漏部位に炎症性変化を伴う乳児脂漏性皮膚炎を生じることがあり,数か月間持続しうる.アトピー性皮膚炎との違いは,発症が早いこと,分布パターンが異なること,そして最も重要なこととして,瘙痒はあっても軽微であり,過敏性,不眠がないことによってアトピー性皮膚炎と鑑別される.アトピー性皮膚炎とは対照的に,脂漏性皮膚炎の乳児は一般的に哺乳量が十分で,発育も良好である4).新生児痤瘡は1 mm程度の小丘疹を呈することが多く,炎症がない場合は稗粒腫と類似している.新生児稗粒腫は一般的によくみられ,硬い白色小丘疹でケラチンを含む囊腫であり,通常2~3週間で自然脱落するが1年以上持続する場合もある.1~2 mmで紅新生児中毒性紅斑も鑑別にあがる.乳児脂漏性皮膚炎は,被髪頭部において黄色い鱗屑が厚く付着し,軽度の炎症を伴うが,乾燥した鱗屑性局面は乾癬様であり,一方で湿潤した間擦部の浸軟局面はカンジダ症に類似する.を伴う場合はまた湿疹性変化で瘙痒がある場合は疥癬を,瘙痒が軽微にも関わらず拡大傾向がある場合はランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis: LCH),ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcal scalded skin syndrome: SSSS)などを鑑別する.いわゆる「乳児湿疹」は脂漏性変化が主体であるため,泡洗浄と油分が少ない保湿剤の使用が推奨される.しかしながら炎症を伴った場合には,やはりステロイドを含む抗炎症外用薬を使用して,炎症に早期介入することで,その後のアトピー性皮膚炎への移行,食物などの経皮感作の進行を抑えていくことが重要である.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の外用薬は接触皮膚炎を生じやすく,感作のリスクがあることから使用しない.山本らは,新生児痤瘡を生じた乳児の皮脂RNAプロファイルによって,生後2か月時点でアトピー性皮膚炎に移行した乳児では,皮膚バリア機能に関連する分子群の発現が減少していることを示し,生後1か月の痤瘡がある時点ですでにアトピー性皮膚炎に近い皮脂RNAプ87abA 湿疹・皮膚炎群/1 乳児湿疹・おむつ皮膚炎
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