..ブ ロ ー カ2, 3)4)2, 3)50失語症が脳の器質的な障害によることが B語機能の局在を考えるうえで非常に重要な出来事であったといえる.このなかで Broca は「構音の消失が第三前頭回脚部の病変で起きる」と報告したが,これは「構音」を独立した言語機能の一要素ととらえている点,また特定の脳部位と特定の症候を対応させて「機能局在」に言及した点で大きな意味をもつとされた.これまで論じられてきた大脳の言語ネットワーク(図 1)の損傷に基づいた古典的失語症候群については,失語症の臨床像を議論するうえでの共通言語としての有用性は現在でも損なわれておらず一定の意義はある.しかし近年においては,CT やMRI などの画像診断技術の発展によって病巣と機能の対応が確認できるようになったこと,また 1990 年代以降に登場した PET や functional MRI などの機能画像技術の進歩などによって,病巣と失語型との対応は以前に考えられていたほど強固ではないことも示されつつある 1)そういった観点からは古典的失語症候群の有用性がうすれつつあるのも事実であり,古典的失語症候群としてではなく,音韻・統辞・意味・語彙といった言語学的水準での症候分析が重要となりつつあるこのように病巣と機能の対応についても少しずつではあるが明らかにされつつあるといえるとはいえ,まだまだ詳細な言語水準における言語機能のネットワークが明らかになったとはいえないのが現状である.ここでは,現時点で明らかになっている要素的言語機能障害と対応する脳部位について解説を加えることで言語機能とその脳内ネットワークの一端について解説したい(図).2,3 1 アナ ル トリ ー(純 粋語唖 / 失構 音)古典的失語症候群においては皮質下性運動失語などといわれていたものに該当する概念である.構音が歪み,音節から音節へのわたりが悪く,修正しようと試行錯誤する探索行動などが特徴である発話異常(アナルトリー)のみを呈し,その他の失語関連症状はみられない.構音などの誤りに一貫性を欠くこと(毎回同じ誤りを示すわけではない)も特徴の一つである.責任病巣については左中心前回中部~下部であることが確実であるる説もみられる.発話異常は経時的に改善し,日常生活に支障のないレベルに改善することが多いが,同時に本人の不全感が継続することもまれではない. 2 音韻 性 錯語(伝導 失語)左上側頭回~縁上回~中心後回,およびそれらの皮質下の損傷によって生じる,復唱 / 自発言語機能の局在Part 2|脳画像と 機能解剖をつなげて 理解しよ うroca によって 19 世紀半ばに報告されたことは言が,島やブローカ領域であるとす脳内ネットワーク6 言語機能と
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