2675骨・軟部腫瘍 改訂第3版
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I MRI の特徴* MRI検査対応型ペースメーカや人工内耳装着患者では,十分な安全性の確認を行った上で検査を行う.オ波による発熱作用がある.この中で,安全管理上最も問題となるのは静磁場による力学作用である.しかし,安全にMRI 検査を行うにはいずれの作用に対しても注意深い配慮が必要である(表1).したがって,検査依頼時に各施設で用意したチェックリストを利用して患者への説明と同意を行い,十分な安全性への配慮が必要である.ペースメーカ装着者と磁化特性が不明な頭蓋内金属を有する患者は禁忌である.近年,MRI 検査対応型ペースメーカや人工内耳が開発されたが,常に重大事故につながる可能性があるので,安全性を十分に確認しながら慎重にMRI 検査を行う必要がある.体内に金属異物を留置してからおよそ3 か月を経過していれば,その金属は磁力によって移動することは少ないとされており,禁忌とはならない.ラジオ波により金属異物周囲に熱発生が生じた場合は,ただちに検査を中止する必要がある.表1 MRI検査にあたりチェックすべき項目1)MRIが禁忌となるもの① 体内埋め込み電子機器:ペースメーカ*,人工内耳*,深部脳刺激装置,除細動器,薬剤注入用ポンプ② 強磁性のインプラントデバイス:強磁性体でできた古い動脈瘤クリップ(材質不明の場合も含む)③ 体内異物:遺残一時ペーシング・除細動用リード線,眼窩内の強磁性体異物2)厳重な注意を必要とするもの① ステントなどの体内埋め込み金属②磁石脱着式の義眼や義歯③補聴器,義足などの補助具④ ニコチンやニトログリセリンの経皮吸収製剤(含有アルミニウムの誘導電流による熱傷)3)検査室に持ち込めないか持ち込むべきでないもの① ベッド,ストレッチャー,車椅子,点滴台,Jバックなど金属部品のあるものなど② ヘアピン,金属製ボタン,ピアス,磁気カード,時計など総 論神島 保 1 MRI の利点と欠点第1章 総 論第1章MRI は静磁場,ラジオ波,傾斜磁場によって誘導されるMR 信号で画像が作製される.したがって電離放射線の被曝がない.そのため,小児や妊娠可能年齢の女性にも検査が可能である.X 線写真やCT がX 線透過性のみでそのコントラストが決まるのと異なり,MRI のコントラストは生体のプロトン(水素原子)がもつ多くの因子に影響を受ける.これらには,プロトン密度,T1 緩和,T2 緩和,プロトンの流れ,拡散運動,磁化率効果などがある.これらの因子を強調することで,T1 を強調したT1 強調像,T2 を強調したT2 強調像,流れを画像化したMR 血管撮影率を強調した磁化率強調像(SWI),水信号を強調した水強調像,脂肪信号を抑制した脂肪抑制像などが得られる.検査目的に応じた組み合わせで撮像を行い,それらの画像の組み合わせから組織に特徴的な信号パターンを読み取り,診断に役立てることが可能である.個々の画像の撮像時間は開発当初と比べてはるかに高速化された.しかし,必要な撮像シーケンスの組み合わせで3 断面の撮像を行うと最低20 分は必要で,数秒で検査が終了するマルチスライスCT と比べるとはるかに検査時間が長い.マルチスライスCT 導入時のような極端な患者スループット改善が図れないため,依然としてMRI へのアクセスは良好とはいえない.MRI 装置が人体に及ぼしうる影響には,静磁場による力学作用,傾斜磁場による神経刺激作用,およびラジa) 利 点1) 放射線被曝がない2) 高い濃度分解能と信号強度の組織特性(MRA),拡散運動を強調した拡散強調像(DWI),磁化b) 欠点とリスク1) 撮像時間が長く,しばしばアクセスが悪い2) 検査にあたり必要な安全性のチェック18MRI の読み方3

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