2675骨・軟部腫瘍 改訂第3版
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第1章総論ba  3 MRI の読み方高磁場環境で撮像するため,生命維持装置やモニターの装着が必要な重傷者は基本的に検査の対象とならない.また,検査の関心領域に金属固定具や人工関節が置かれている場合には,金属アーチファクトにより検査の目的を達することはできないため,検査の対象外となる.3) 撮像範囲の制限画像の空間分解能と撮像領域の大きさは逆相関の関係にあるため,大きな撮像領域を選択すると,詳細な診断は困難となる.高精細画像を得るためには,できるだけ撮像領域を限定することが必要である.コイルシステムの発展に加え,最近はAI再構成が使用されるようになり広範囲に高分解能の撮像が可能となってきた(図1).最近の装置はガントリ径が大きくなり,オフセンターとなる肩や手など四肢の画像は改善しているが,できる限り関心領域が磁場の中心にくるような撮影時の工夫が必要である.T2*強調像(T2強調像に類似した画像で薄層撮影が可能)を多用する関節内障と異なり,骨軟部腫瘍では組織のT1,T2 を正確に評価する目的で,スピンエコー法のT1 強調像とT2 強調像が基本的に使われる.症例に応じて,脂肪抑制像,T2*強調像,造影MRI などが追加撮像される.a) 基本的なMR 画像1) T1 強調像MR 画像のコントラストを決定する多くの因子の中でT1(縦緩和時間)を強調した画像.T1 が短いほど高信号になり,これらには,脂肪,粘調な液体,水分子と混ざり合うメトヘモグロビン,メラニン,ガドリニウム造影剤などの常磁性体がある.一方,T1 が長いほど低信号になり,これらには,自由水(脳脊髄液や尿のようなさらさらの水)や自由水の豊富な病変(浮腫,炎症)がある.2) T2 強調像T2(横緩和時間)を強調した画像.T2 が長いほど高信号になり,これらには,自由水(脳脊髄液のようなさらさらの水)や自由水の豊富な病変(浮腫,炎症)がある.一方,T2 が短いほど低信号になり,これらには,粘調な液体,蛋白質(線維化,腱,筋など),水分子と混ざりにくいデオキシヘモグロビン,ヘモジデリン,フェリチンなどの常磁性体がある.3) T2*強調像信号強度の態度は基本的にT2 強調像と同じであるが,磁化率効果が画像に強く反映されて無信号域が拡大する(bloomingアーチファクト).陳旧性出血や反復性出血によるヘモジデリン沈着を感度よく検出できる.b) 特殊なMR 画像1) 脂肪抑制像MR 信号は水と脂肪のプロトンから得られるが,このうち,脂肪成分からのMR 信号を抑制し,水成分からのMR 信号を強調する撮像法である.脂肪抑制法は,①浮腫や炎症などT2 延長病変の描出能を高める,②脂肪組織の検出を行う,③ガドリニウム造影剤の造影効果を強調する,④拡散強調像における背景信号を抑制する目的で利用される.脂肪抑制法には水と脂肪の共鳴周波数が3.5 ppm 異なることを利用した化学シフト選択法(chemical shiftselec-tive 法〈CHESS 法〉),脂肪の縦緩和時間が短いことを利図1 全身MRI (a)全身を覆うマルチチャネルアレイコイル.(b)造影後脂肪抑制T 1強調冠状断像.左肋骨と左大腿骨に転移性骨腫瘍を認める(矢印). 2 撮像法と画像の特徴19

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