2676小児腎臓病学 改訂第3版
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腎とホメオスタシス2●カリウム代謝Ⅰ総論第2章図5 高カリウム血症の鑑別診断フローチャート e 異常値がみられたときの考え方,考えられる疾患に治療が必要である.その方法は以下の通りである. a カルシウム製剤 心筋の安定化を図る役割があり,心電図異常がある際には最初に投与を検討する. b グルコース・インスリン(GI)療法 インスリンとブドウ糖を同時に投与することで,細胞内へのKの移動を促し,血中K濃度を一時的に下げることができる. c β2刺激薬吸入 サルブタモールなどのβ2カテコラミン受容体刺激薬もKの細胞内移動を促進し,血中濃度を下げる効果がある. d イオン交換樹脂 消化管粘膜を介してKを除去する. e 重炭酸ナトリウム 特に重度のアシドーシスがある場合には,重炭酸の投与によりKを細胞内に移動させる.Na負荷をきたすので注意が必要である. f 利尿剤 フロセミドなどの利尿剤は,腎臓を通じてKの排泄を促進する. 8 高カリウム血症a)TTKG高値 遠位尿細管におけるK排泄能の亢進,つまりアルドステロン作用の異常な増強を示す.低カリウム血症下でのTTKG高値は異常であり,その場合,アルドステロン症または偽性アルドステロン症(Cushing症候群やLiddle症候群)が疑われる.b)TTKG低値 遠位尿細管におけるK排泄能の低下,つまりアルドステロン作用の異常な減弱を示す.高カリウム血症下でのTTKG低値は異常であり,その場合,低アルドステロン症,副腎不全,偽性低アルドステロン症が疑われる.下,細胞内からのKの移動,偽性高カリウム血症などがあげられる.それらの病因は表2に示す.停止,筋力低下,麻痺,筋けいれん,悪心・嘔吐,腹痛,易疲労感などを生じる.1)病因・病態 Kの負荷(外因性・内因性),腎からのK排泄低2)臨床症状 不整脈(期外収縮,徐脈,房室ブロックなど),心3)診断の手順 高カリウム血症の診断フローチャートを図5に示す3).4)治療 不整脈や心電図異常を伴う高カリウム血症は緊急高カリウム血症摂取過剰TTKG>7静注大量摂取除外偽性高カリウム血症(採血時溶血)Kの細胞内から細胞外への移動(細胞障害・α刺激・アシドーシス)高カリウム性周期性四肢麻痺腎からの排泄低下FEK<15%TTKG>7遠位側へNa・水到達の低下脱水心不全腎不全TTKG<5ミネラルコルチコイド作用↓(IV型尿細管性アシドーシス) 副腎不全 RAS阻害薬 その他薬剤性 K保持性利尿薬 偽性低アルドステロン症 間質性腎炎欠乏反応性低下31

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