2676小児腎臓病学 改訂第3版
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全身性疾患に伴う腎障害2●紫斑病性腎炎Ⅱ各論第3章表2 欧州リウマチ学会/小児リウマチ国際研究機関/欧州小児リウマチ学会の分類基準(2010)表1 米国リウマチ学会の診断基準(1990) 3 診断(臨床徴候と検査所見)1)診断基準 本症に対する診断基準として,米国リウマチ学会の診断基準(1990)(表1)3)および欧州リウマチ学会/小児リウマチ国際研究機関/欧州小児リウマチ学会の分類基準(2010)4)(表2)が用いられる.IgA血管炎の診断後に血尿・蛋白尿が出現すれば紫斑病性腎炎ど)も発症誘因となる. 疾患感受性因子として,HLA(HLA‒DRB1,HLA‒B35)のほか,IL‒18,TGF‒B1,MCP‒1,SELP,MEFV遺伝子が知られている.そのほか腎炎については,IL1β,IL‒1ra,TGF‒β1,IL‒8,CCL5,CTLA4遺伝子との,消化器症状については,CP1,ICAM‒1,AGT,MEFV遺伝子との関連が知られている. IgA血管炎はIgA1を主体とする免疫複合体が主として小血管の血管壁に沈着して障害される全身性の小血管炎であり,紫斑病性腎炎では,免疫複合体が主として糸球体メサンギウム領域に沈着することにより病態が進展する.IgA腎症と同様に,IgA1分子の糖鎖異常が病態に関与していると考えられており,IgA血管炎の患者では,IgA1分子のヒンジ部に結合するO結合型糖鎖を構成するガラクトースを欠損する糖鎖不全IgA1が血中で増加している.糖鎖不全IgA1は自己凝集能が高く多量体を形成するとともに,IgGと結合し免疫複合体を形成する.また,メサンギウム基質との粘着性も高い性質を有する.糖鎖不全IgA1を含む免疫複合体がメサンギウムに沈着すると補体が活性化され,サイトカイン,ケモカインの産生亢進を介して腎炎病態を惹起すると考えられている(図1)1,2).と臨床診断されるが,確定診断は腎生検による病理組織診断による.腎生検の適応については,血尿単独陽性例では原則としてその適応にはならず,高度蛋白尿,ネフローゼ症候群(血清アルブミン<2.5 g/dL),急性腎炎症候群(高血圧もしくは血清Cr値上昇),急速進行性腎炎(数日,数週間の単位で血清Cr値上昇が進行するもの)症例では腎生検が考慮される.腎生検の実施時期については,確固たるエビデンスが存在しない.Teranoらは2013年から2015年に実施された15歳未満の日本人小児の紫斑病性腎炎の全国疫学調査(353施設:回答率58.7%)の中で,臨床診断から腎生検実施までの期間についての調査を行い,腎機能障害(血清クレアチニン値の2倍以上の上昇あり)を呈する症例では,蛋白尿があっても比較的早期に腎生検が実施されている一方で,腎機能障害のない症例では,蛋白尿の程度によって腎生検の実施時期が決定されており,低アルブミン血症(血清アルブミン<2.5 g/dL)の患者の66.9%は1か月以内に腎生検を実施されているが,それ以外の場合には,尿蛋白/クレアチニン比≧1.0 g/gCrの場合は3か月以上,0.5 g/gCr≦尿蛋白/クレアチニン比<1.0 g/gCrの場合は6か月以上蛋白尿が持続する場合に半数の施設で腎生検が実施されていることが明らかになった5).これらの所見が参考にはなるが,現状では地域ごと施設ごとに適応は異なるため,地域ごとの医療連携が重要である.必須項目:血小板減少性紫斑によらない下肢優位の触知可能な紫斑または点状出血紫斑に加え以下のうち1項目以上を認めればIgA血管炎と分類できる腹痛病歴または身体診察により評価された急性に発症する腹部全体の疝痛で,腸重積,消化管出血を認める場合がある病理組織所見IgA沈着を伴う白血球破砕性血管炎またはIgA沈着を伴う増殖性糸球体腎炎関節炎関節痛急性発症した関節炎で,可動域制限を伴う関節腫脹または関節痛がある急性発症した関節痛で,関節腫脹も可動域制限も伴わない関節痛がある腎障害1日尿蛋白が0.3 gより多いか早朝尿で尿中アルブミン/クレアチニン比が30 mmol/mgより多い.血尿,赤血球5個/HPFより多い,尿沈渣で赤血球円柱を認める,尿試験紙法で2+以上を示す(Ozen S, et al.:Ann Rheum Dis 69:798‒806,2010より引用)1.隆起性の紫斑2.初発年齢が20歳以下3.急性の腹部疝痛4.生検組織での小動静脈血管壁の顆粒球の存在上記4項目のうち二つ以上を満たす場合IgA血管炎と分類する(Mills JA, et al.:Arthritis Rheum 33:1114‒1121, 1990より引用)279

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