3)検査所見 a 血液検査所見2)臨床徴候 a 皮膚症状Ⅱ各論 第3章 全身性疾患に伴う腎障害 下腿および臀部を中心とする,左右対称性の数mm~1 cm大の類円形の膨隆した触知する紫斑および紅斑を認める.皮疹は時間経過とともに拡大その後平坦化し,徐々に黄褐色調を呈し数週間で消退する.皮膚症状は約90%の症例で関節症状や腹部症状とともに出現するが,一部の症例では皮膚症状が遅れて出現する.約50%の症例で,手背,足背,足関節部などに限局性浮腫を認める.その他の皮膚症状として,擦れや掻破などの機械的な刺激で皮膚症状が誘発されるケブネル現象や四肢末端を中心に血疱や皮膚潰瘍を認めることがある. b 関節症状 50~80%の症例で認められ,発症早期に出現することが多く,膝や足関節など下肢の大関節炎を高頻度に認めるが,手関節や肘関節,手指関節などの小関節も罹患し得る.腫脹・圧痛が強い一方で,熱感・発赤は軽度であることが多い.多くの場合1週間以内に改善する.罹患関節数は4個以下の少関節炎で,片側性のことが多い.再燃が約3割の症例において認められ,発症1か月以内の再燃多い.関節破壊はみられず予後は良好である. c 腹部症状 消化器症状は全体の50~80%の症例で認められ,症状としては腹痛が最も多く,発作的に鋭い痛みを生じる疝痛が特徴的である.約10%の症例では腹痛が皮膚症状に先行するため,原因不明の急性腹症として診断が困難なこともある.腹痛のほか血便や下血も認められる.消化器病変の好発部位は十二指腸を含む小腸であることから,新鮮血よりも粘血便や黒色便を呈することが多い.腸重積症を合併することもあり,重積部位としては小腸‒小腸型が最も多く,次いで小腸‒結腸型の頻度が高い.小腸穿孔や壊死性腸炎など外科的な治療を要する場合もあり,治療中に腹痛が増強するような場合には消化管穿孔の合併に注意を要する. d 紫斑病性腎炎 紫斑病性腎炎は皮膚,関節,腹部症状より遅れて出現し,85%は発症後4週までに,91%が6週までに,97%が6か月までに発症する.経過観察中の尿検査で血尿や蛋白尿を呈して発症することが多いが,血尿単独のものから急性腎炎症候群,ネフローゼ症候群,急速進行性腎炎症候群を呈する例まで,その発症形式は非常に多彩である. e その他の合併症 全身性の血管炎であるIgA血管炎ではこれらの主要症状のほか,頭蓋内出血,急性脳症,可逆性後頭葉白質脳症などの神経合併症,びまん性肺胞出血などの呼吸器合併症,心筋炎,弁膜症,血栓症などの循環器合併症,膵炎,胆囊炎などの消化器合併症,閉塞性尿管炎,陰茎紅斑,精巣上体炎や精巣炎などの泌尿生殖器合併症など,多彩な臓器合併症を認めることがある. 診断に対する特異的な検査所見はない.血小板数の低下は認めず,血清IgA値の上昇は約30%の症例で認められる.白血球増多と血小板増多は腎炎発症のリスク因子として知られている.凝固第XIII因子の低下を認め,消化器症状の強い重症例ほど低下する傾向がある. b 皮膚病理組織所見 真皮上層から中層の細静脈を主とした小血管周囲に,核塵を伴う炎症細胞(好中球,好酸球,リンパ球,組織球)の浸潤とフィブリンの血管壁およびその周囲への沈着,赤血球の血管外への漏出を伴う,白血球破砕性血管炎を呈する.また,病変皮膚において血管壁にIgAの顆粒状沈着を認める.ただし陽性率は50~80%とされ,血管壁でのIgAの沈着がない場合でも,IgA血管炎を除外することはできない.IgAの陽性率は紫斑出現後48~72時間以上経過すると低下し,多くの場合C3のみ陽性あるいはC3も陰性となる. c 腎病理組織所見 メサンギウム細胞の増殖および基質の増加を伴う,巣状あるいはびまん性のメサンギウム増殖性糸球体腎炎を呈する.IgA腎症と比較し,半月体形成の頻度が高く,そのサイズも大きい傾向にある.腎炎の重症度は,国際小児腎臓病研究班(ISKDC)による組織分類により評価する(表3)6).蛍光抗体法では,メサンギウム領域にIgA優位の免疫複合体の沈着を認める.電子顕微鏡所見では,メサンギウム領域のほか,パラメサンギウム領域にも高電子密度沈着物を認め,急性期には上皮下にも高電子密度沈着物を認めることがある.280
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