Ⅲ1●● 62 治療a ドキシサイクリン(Doxy)みんなの基本事項医師向け基本事項専門家向けトピック クラミジア感染症では,すべての患者に対して抗菌薬治療が必要です.抗菌薬治療は,骨盤内炎症性疾患(PID),不妊症,異所性妊娠,精巣上体炎などの合併症や後遺症を予防するうえで重要です.早期の治療介入は,治療が遅れた場合と比較して,異所性妊娠や不妊症のリスクを低下させることが示されています7). クラミジア感染症の原因菌である C. trachomatis は,多くの抗菌薬に感受性を示します.テトラサイクリン系薬,マクロライド系薬,ニューキノロン系薬などが有効です.現在のところ,C. trachomatis に対する抗菌薬耐性の報告は比較的少ないですが,今後の動向を注視する必要があります. クラミジア感染症は,感染機会となった性行為直後には臨床症状をほとんど示さないため,薬剤選択では臨床的治癒(症状の寛解)よりも微生物学的治癒(菌の消失)を重視する必要があります.淋菌感染症と同様に,咽頭や直腸・肛門にも高頻度で感染するため,感染しうる全部位において高い確率で微生物学的治癒が期待できる薬剤を選択します. クラミジア感染症の治療には,いくつかの薬剤が使用されます.それぞれの薬剤の特徴を理解し,患者の状態に合わせて適切な薬剤を選択することが重要です.主な治療薬の特徴を表 3 に示します. ドキシサイクリン(doxycycline:Doxy)100 mg,1 日 2 回,7 日間投与は,性器,咽頭,直腸・肛門のすべてにおいて高い有効性を示すため,第一選択薬として推奨されます.アジスロマイシン(azithromycin:AZM)1,000 mg 単回投与に比べて,咽頭や直腸・肛門感染に対する治療成績が優れています.女性では,腟で陽性の治療および微生物学的治癒
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