Ⅲ12OHIV感染症231 ●●予防の重要性予防のための 2 つの柱みんなの基本事項医師向け基本事項専門家向けトピック 免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,抗 HIV 療法の進歩によりウイルス量をコントロールすることが可能となり,HIV 感染者は適切な治療を受けていれば,非感染者とほぼ同じ余命を得られるまでになりました.しかし,いったん感染すると治癒することはないため,治療は生涯続けなければなりません.そのため,多角的視点からの予防戦略がきわめて重要となります. たとえ治療薬が進歩して飲みやすくなったとはいえ,「毎日忘れずに飲まなければいけない」というプレッシャーや副作用の心配もあります.また,経済的な負担も少なくありません.たとえば,20 代の感染者が 40~50 年間治療を受けたとすると,その生涯の医療費は 1 億円を超えると試算されています.もちろん,HIV 感染症に対する治療は保険適用であり,各種の助成制度があるため,治療費の個人負担額は限られています(収入により 1 か月 5,000~20,000 円).とはいえ,その他の部分は公費から支払われるので,最終的には税金で賄われることになります.そこで,様々な面で感染を予防することが重要になってきます. HIV 感染症の予防には,2 つの大きな柱があります. 1 つ目が,曝露前予防(pre‒exposure prophylaxis:PrEP)(プレップ)です.HIV未感染者が,感染リスクの高い行為に曝露する前に抗 HIV 薬を服用することで感染を防ぎます.PrEP には予防したい本人が主体的に行えるというメリットがありますが,HIV 感染症しか予防できないというデメリットがあります. 2 つ目は,コンドームによる物理的な予防です.性行為時にコンドームを使用予 防
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