2682小児神経診断エラー学
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第3章 症例15はじめにてんかんと失神は,お互いにある割合で診断エラーが混在すると考えられる.てんかんの診断で抗発作薬の投与を受けていた患者に対し,採血時に意識消失の既往があったため,脳波検査中に採血を行い失神の診断に至った患者の経過を分析してみる.臨床経過 症例  17歳 男子. 主訴  突然の意識障害. 発達歴,家族歴,既往歴  特記すべきものなし. 現病歴 8歳時にレストランの待合室で座っていて突然上下肢,頸部を伸展させ左側方に倒れかかった.意識障害の持続は30秒で,呼びかけにも反応しなかった.そのときの記憶はないがすぐに回復し食事をして帰宅.翌日に当院を受診した.神経学的に異常なく,頭部CT,脳波,心電図なども異常はなかった.その後,てんかん疑いとして経過観察をする予定だったが,受診は途絶えていた.11歳時に指を切って保健室で処置中に意識消失(詳細不明)し,12歳時に採血時に意識消失(詳細不明)した.16歳時に授業中椅子に座っていたところのけぞって気を失い左側に倒れた.意識消失の持続は10秒で身体がピクついていた.近医を受診したが,頭部MRIと脳波に異常はなく,てんかん疑いでバルプロ酸ナトリウム(VPA)を開始した.17歳時に精査目的で当院を受診した. 診察所見 一般内科学的所見:胸腹部聴診上異常なし.神経学的所見:脳神経系,運動系,感覚系,言語等の高次機能に異常なし.てんかんか失神か,それが問題188

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