2682小児神経診断エラー学
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“The Institute of Medicine:IOM”)が,DEについて444ページにも及ぶ大著『医療における診断を改善する(improving diagnosis in health care)』 2)を公にして,これまでの議論を集大成した.本報告書においては「不正確な診断や診断の遅れは,あらゆる医療現場に根強く残っており,許容できない数の患者に害を与え続けている」とこれまでの歴史を総括し,DEは個人というよりも医療提供システムの失敗であると位置づけた.すなわちDEの多くは医師個人の行動に関連しているものの,診断プロセスを改善するためには,診断に関する医療者の教育/訓練や日々の診療を支援する各種ツールなど,医療提供システムを全体的に見直す必要がある.そのためNAMは,診断の多彩な側面と一致する概念モデルを提案した(図1).本モデルでは,患者を含む多くの情報源から何度も情報収集を繰り返しつつ総合的な検討を行い,患者の健康問題を特定するためには,高度な認知的推論とそれを支援する要素が不可欠であることが示されている.すなわち診断プロセスは,不確実かつ複雑でエラーが発生しやすく,診断内容も時間とともに変化し,また患者を含む多くの関係者の間でのハンドオフ(情報の受け渡し)があるため非常に脆弱なのである.そしてNAMは,診断プロセスの全体を改善するために,DE 図1  診断プロセス概念図〔Balogh EP, et al.:Improving diagnosis in healthcare. Washington DC:The National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine, 2015(https://nap.nationalacademies.org/catalog/21794/improving-diagnosis-in-health-care 2024/09/03 閲覧確認)より筆者訳〕患者とシステムにとっての結果診断のエラー,ニアミス,正確で適時な診断から学習治療時間アウトカム患者と健康問題について双方向に説明する診断に基づいた計画された診療の工程情報は十分に収集されたか?暫定診断患者に健康問題が発生する患者が医療施設に受診する診断的審査病歴聴取と医療面接身体所見紹介とコンサルテーション情報の統合と解釈情報の収集診断に関するコミュニケーション31 診断関連エラー総論─社会的認知理論ファミリーを理解する第第第第第第123

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