2682小児神経診断エラー学
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第1章 総論2 1 はじめに紀元前18世紀に作成されたハンムラビ法典第218条には,「手術により患者が死亡した場合,あるいは,腫瘍の切除に際し患者が眼を失った場合,医師の両手を切断するものとする」書かれていた.ヒポクラテス(図1)は医聖として有名であるが,彼の「ヒポクラテスの誓い」では“above all, do no harm(何よりも,害をなすなかれ)”と記載されており,医療者は患者に害をなしうる存在であることが明瞭に認識されていた.いつの時代でも医療過誤や診断エラーを回避するための方策に通じていることは「身のために」必須である.孔子は「過ちを改たむるに憚ることなかれ」と二千有余年の昔に言った.医師でもあった本もと居おり宣のり長なが(図2)は先師賀か茂もの真ま淵ぶちの誤りを指摘し,当時の学者仲間に難詰された.しかし宣長は,「自分の説に誤りがあれば遠慮なく訂正することこそ弟子の務めとし,間違いが後世に残ることこそ学者の恥」との師の教えを『玉勝間』のなかで述べ診断エラーの歴史 図2  本居宣長(日本,2001年発行切手) 図1  ヒポクラテス(ギリシア,1979年発行切手)11第第第第第第123

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