第2章 各論7 1 はじめに神経内科領域の診断においてCTやMRIをはじめとした神経画像が果たす役目は大きい.一度撮影した神経画像は劣化しないため,身体診察所見とは異なり,複数の医師での共有が容易である.したがって診断エラーが比較的生じにくい領域ではある.一方で神経画像を撮像して,評価するというそれぞれのプロセスにもピットフォールは存在する.わが国では神経画像の撮像数に比して,放射線科の読影医が相対的に少なく,小児科医自身で読影せざるをえないこともあり,自分たちでもそのピットフォールを理解しておく必要がある.本項では,おもに頭部CT,脳MRIを中心に,自分の負の財産である自験例も含めて画像診断のピットフォールについて述べる.概して,悔しい,恥ずかしいという負の感情を伴う経験こそ,自分を育てる糧となる.皆さまも清濁あわせた経験を大いに積んでいただきたい.なお,症例提示は趣旨の変わらない範囲で一部記載を変更した. 2 正しく撮像するどんな名医であっても,映っていないものを読影することはできない.撮像範囲と撮影シークエンスを決定することは,読影と同等に重要である.教訓となる症例の提示を交えて概説する.(1)病変を撮像範囲に捉える症例1 呼吸不全を繰り返す脳性麻痺児新生児虚血性脳症による脳性麻痺の5歳児.経管栄養,寝たきりではあったが,それまでの呼吸は安定しており,補助換気や酸素投与を要していなかった.画像診断におけるピットフォール92
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