2682小児神経診断エラー学
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半年前から,喘鳴を伴う急性呼吸不全のため,気管挿管での数日の人工呼吸管理を要することが1か月に1回程度認めた.暫定的に気管支喘息発作として加療しつつ,原因の精査のため頭部CTを撮像したが,既知の大脳萎縮は見られたものの,出血などの新規病変は見られなかった.引き続き脳MRIを撮像したところ,矢状断で髄腔の狭窄とそれに伴う上部頸髄のT2高信号を認めた(図1左).急いで頸椎CTを撮像したところ軸椎歯突起骨折(図1右)が明らかになった.後部椎体固定術を行い,呼吸不全のエピソードはなくなった 1).脳を対象とした頭部CT画像は,眼窩中心と外耳孔を結ぶ眼窩耳孔線(OMライン)を基準線として,頭頂部から大後頭孔まで撮像することで,脳全体を撮像範囲に捉える.一方で,甲状腺被曝を避けるため,頸椎が撮像範囲外となる.重度の頭部外傷や,四肢麻痺,呼吸不全の精査で撮像するときには,頸部病変を意識して撮像範囲を含むように広めの撮像範囲を指定し,三次元再構築が可能なようにヘリカルCTで撮像することが肝要である. 図1  呼吸不全を繰り返す脳性麻痺児左:MRI画像で上位頸髄にT2高信号あり(矢印).右:CT画像で軸椎歯突起の分離骨折あり(矢印).937 画像診断におけるピットフォール第第第第第第123

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