1191.言語とコミュニケーション支援:幼児期3実践編 インリアル・アプローチど使っていませんでした.何より,人への関心はあるのに自発的にかかわっていこうとしていないのが気になりました.初めての人や場に慣れにくく,人が近づくと「ア〜!」と大きな声を出して払うような仕草をしたり,その場に座り込んだり,時には相手の顔をパンとたたいてしまったりすることがありました.人との信頼関係が十分に築けていませんでした.そこで,段階を追って支援計画を立て,以下のように取り組みました.b取り組み①第1段階:人との信頼関係を築く 特定の人と信頼関係を築き,通じ合う手応えを得ることで,その人を介してほかの人にかかわっていけるようになると考え,すぐに集団活動に参加させようとせず,担当者(支援者)を決め,個別にかかわることで,人や場を理解すること,それを話題にやりとりできるようになることをねらいました. 家庭でも身振りや手話を使って楽しくやりとりし親子関係を深めていってほしいので,母親にもできるだけ保育場面に参加してもらいました. 担当者はB児と母親の仲介役として,母親にB児の考えていることや意図を読み取って知らせたり,かかわり方のモデルを示すようにしました.たとえば担当者が母親とB児の斜め前(両者に見える位置)に座って,指さしや手話で「あれ,好き」「いや」「怖い」など感じたことを表現してみせたり,「したい」と表現しながら,集団に参加してみせたりしました(図1).そして,親子で「……してるね」「おもしろいね」「残念ね」など,その場その場でタイミングよく共感的なかかわりをしてもらうようにしました.個別指導の場面では,担当者としたことを,「見たよ」「できたよ」など,母親に伝えるチャンスを作りました.次第に,楽しいときには母親から離れてピョンピョン跳びはねたり手をたたいたりするようになりました.担当者もB児のまねをして,ピョ発達検査の結果:津守・稲毛式乳幼児精神発達質問紙による生活年齢運 動探索・操作社 会食事・排泄生活習慣理解・言語4:52:01:60:101:90:10表1行動観察(コミュニケーションに関係する項目)幼稚部入学時(4:5)の様子対人関係⚫新しい場や人に慣れにくい⚫人のしていることをよく見ているが,自分からかかわっていくことが少ない⚫人からのかかわりを拒否することが多い遊びなど⚫一人遊びが多い.一人でほほをなでながら「ンーンー」と歩き回ることが多い⚫写真や簡単な絵カードが好きでよく見ている⚫ピョンピョン跳んだり,体を動かすことが好き⚫生活道具や楽器を操作したり生活行動を再現したりしているが,遊びとして続かない言語・コミュニケーション⚫簡単な身振りの意味はわかっている 例)指さしたほうを見る,椅子をたたくと座る,どうぞ(あげる),ちょうだい,食べる⚫声をよく出しているが,独り言のような発声が多い.例)「アー」「ンンン」,喃語のような声⚫「アー」と威嚇するような声を出して人の注意を引いたり,物を渡して要求することはあるが,物を見せて人の注意を引いたり共感的な動作をしたりすることは少ない表2
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