2684ダウン症児の学びとコミュニケーション支援ガイド 改訂第2版
13/16

1211.言語とコミュニケーション支援:幼児期3実践編 インリアル・アプローチしたりするよ.たのしみだなぁ」など,知っていることや,何をしたいか,何を持って行くかなどをことばや手話を三〜四語文くらいで表現しながら話が弾んでいきます.B児には,絵カードを指さしながらことばに手話をつけて,「バス」「行く」「遊ぶ」(以下,下線がついた語は,ことばに手話がついたものです)など,中心になる話題を一〜二語文で伝えるようにしました.次第に手話の模倣使用が増え,手話でパラレル・トークをすると担当者のまねをしたり(表3),気づいたことを伝えようとしてくれるようになってきました.【手話を多語文表現にする】 半年後にはある程度手話単語が増えてきたので,語彙を調べ,その語彙を組み合わせて二語文表現にしていきました(表4).1年後には二語文表現も増え,何を伝えたいのかがわかりやすくなってきました.知っていることばを組み合わせることで二語文表現が無理なく促されたようです.しかし,ミカンが欲しいときに「ちょうだい」と手話で表現しますが,「ミカン」が思い出せないようでイライラすることもありました.「ミカン」の手話は皮をむく動作で表しますが,その一部(構え)をしてみせるなどのヒントを与えると,思い出して表現してくれました.また,「歩く」という手話を歩く行動に関連づけていくと,歩くときにいつも「歩く」という手話をするなど,再現性が高まりました.語想記の弱さへの配慮が必要です. 幼稚部卒業時には,手話単語は100語を超えました.単語で表現することも多いですが,手話をつなげて「先生,これ(指さし)好き.これ(指さし)嫌い」,「これ(指さし)とこれ(指さし),いっしょ(同じ)」「先生,一緒,ブランコする」というように,誰と何をどうしたいのかといった自分の気持ちを二〜三語文で表現することが増えました.③第3段階:手話を使って自分から人にかかわっていく B児は,知ってる手話が増え,集団活動に参加できるようになっても,自分からなかなか先生や友だちにかかわっていこうとしませんでした.遊びの場面では,同時に理解しなければなら手話を用いたパラレル・トークB児 担当者(先生)他児がお遊戯をしているのを見て,ニコニコしながら「アー」と言う 他児を指して,「ピ(手話)ョンピョン,お(手話)もしろいね」パラレル・トーク先生を見て「お(手話)もしろい」 模倣使用 「ピ(手話)ョンピョン,お(手話)もしろいよね」エキスパンション表3語彙マップ(二語文作り)B児の手話表現(単語)二語文おうち 給食 牛乳 ごはん リンゴ バナナ 犬 ネコ パンダ うさぎ 先生 薬 雨 鬼 電話 本 トイレ 緑 赤青 黄 …などごはん 食べるトイレ 行く先生 バイバイ本 見るリンゴ ちょうだい先生 一緒牛乳 ない薬 いやネコ 好き鬼 怖い …などする 食べる 遊ぶ 見る 聞く 寝る 泣く 行く 洗う 立つ バイバイ ちょうだい どこ? 頑張る …などオッケー いたい うるさい おもしろい ない ある 同じ 一緒 しまった 嫌 好き かわいい 残念 難しい …など表4組み合わせる

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る