12A ダウン症児の特徴と育ちを理解するパッケージとして記憶することのほうが得意なようです.そのため一見よく理解しているように思われがちですが,一つひとつの理解を積み上げたものではなく,全体の概略の記憶によるものが多いということを教育・療育する側は理解したうえで対応する必要があります.療育の効果は相乗的であり,一つの療育を受けたことが別の面で生きてくることがあるため,どのようなことでも継続することが大きな力になります. それに加えて,余暇活動も大切です.低緊張であっても,繰り返しトレーニングを行うことで,ヒップホップダンスやレスリング,水泳などで活躍する方も現れています. 言語発達レベル,性格特徴,学習の特徴,自閉傾向などの課題は個々で違っています.しかし,このような課題をベースに環境に対する不適応が生じている場合があり,抑うつ傾向に陥っていることがあります.社会生活上の困難が生じたときには,前述のことを原因検索の参考にすると理解しやすいと考えられます. 一部に「ダウン症候群における社会性に関連する能力の退行様症状」とよばれる,比較的青年期早期の抑うつ傾向を示す状態がみられます(「さまざまな合併症・健康管理」p.10,「対人的なかかわりへの消極性,指示を拒む,引きこもるなどの課題の理解」p.34参照).(玉井 浩)44 成人期余暇活動(音楽)を楽しむダウン症児継続して和太鼓の練習をしてコンサートに出演するまで上達した2人(ご本人およびご家族の許諾を得て掲載).図2余暇活動(ダンス)を楽しむダウン症児筋力は弱いが,鍛錬を積んで動きの激しいブレイクダンスをする3人(ご本人およびご家族の許諾を得て掲載).図3ダウン症児を取り巻く教育・福祉・医療合併症があると医療と長くかかわる.合併症がないと,医療や療育施設と離れてしまいがちである.小学校では支援学級で総合的支援を受けることになる.図1出生6歳12歳20歳医療小学校リハビリ・療育施設保育所・幼稚園中学・高校就労療育空白になりやすい時期
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