572.初期の発達を支える:赤ちゃん体操教室2実践編 療育aダウン症児の姿勢・運動発達の特徴 ダウン症児の姿勢・運動発達の特徴は,筋肉の緊張の低さや関節を支える靭帯・関節包などの軟部組織の緊張の低さから,重力に抗して姿勢が保持できず(図1),その結果,姿勢変換(寝返り,腹ふく臥が位い⇔座位,椅子座位⇔立位)や移動手段(ずり這い,ハイハイ,伝い歩き,歩行)の獲得が遅れることです. 姿勢保持が持続しないことは,注意集中の途切れやすさとなり,課題へ取り組む意欲を低下させます.また,集団活動への参加の難しさにもつながっていきます. 赤ちゃん体操を早期から行うことで,子どもの姿勢を保持する時間が長くなり,集中して見る力や興味ある対象に向かって自ら移動したいという意欲が育ちます.それは,知的発達を促すとともに,さまざまな活動に参加したり余暇を楽しんだりするための力となります.b赤ちゃん体操のポイント 赤ちゃん体操を実施するときに介助者は,次の3つのポイントを意識しながら行います. ①正中位を作る(姿勢の左右対称性) ②肩甲骨・骨盤を安定させる ③支持点に向かって筋肉が収縮するように荷重(体重)を加える①正中位を作る(姿勢の左右対称性) 正中位を作るとは,体軸つまり頭部・体幹・骨盤を一本の柱として,頭の向きや手足の位置によって左右対称な姿勢を作ることです.ダウン症児は,仰向けの姿勢でいるときは,股関節は左右に大きく開き(股関節開排位),膝の外側が床につき,両腕は持ち上げず横に開いていることが多いです.そのため,自分から体の真ん中(正中線)で左右の手足を合わせて遊ぶことがありません.また,うつぶせ姿勢では,股関節を左右に大きく開いて,胸やお腹をつけたままの姿勢が長く続きます. 赤ちゃん体操では,仰向けで赤ちゃんが手足を体の中央にもってくるようにおもちゃで誘導します.子ども自身で上肢を挙上することが難しいときは,介助者が肩周辺を支え,上肢の挙上を助けます(図2).うつ伏せでは,胸やお腹の下にタオルなどを入れ,上肢と膝で体重を支える姿勢を取らせます(図3).体軸が一本の柱に整ったあと,左右に体重移動ができるようになれば,22 体操指導低緊張による2つ折れ座位図1
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