592.初期の発達を支える:赤ちゃん体操教室2実践編 療育③支持点に向かって筋肉が収縮するように荷重(体重)を加える 3つ目のポイントは,発達レベルに応じた支持点に向かって荷重(体重)をかけることです.うつ伏せでは,上肢の支持点は前腕→肘→手掌の順に変化していきます. 椅子座位が保てるようになると骨盤と足部が支持点となり,ハイハイでは膝と手掌,膝立ちでは膝,立位では足部が支持点となります.cダウン症児の姿勢・運動発達上の問題点①首の傾き 首の傾きとは,首が左右あるいは前後に傾いたり,回旋している状態を指します. 体軸を一本の柱とし,しっかりと追視をさせることで,頸部の筋肉が強化され,傾きが改善されます(図6).座位においても,肩甲骨を安定させ,骨盤にかかる荷重の左右対称性を意識して姿勢を保つことが大切です.ただし,視力,聴力の左右差,環軸椎の亜脱臼など,医療的な問題をチェックすることも必要です.②円えんぱい背(脊柱後弯) 背中が丸くなると換気が悪くなり,気管支炎や肺炎時の喀痰がうまく出せず,回復に時間がかかります.腹臥位を十分させたり,腹筋•背筋をバランスよく収縮させながら,上体を反らせたり,まねっこ遊びで両腕を挙上させ胸を張るように誘導します.③シャフリング 腹臥位を嫌がる子どもでは,ハイハイを獲得する前に,床座位のまま移動することがあります(シャフリング).その場合,腰椎後弯による円背を示します.また逆に,背中を過度に反らせて体幹を安定させようとする場合には,座位から腹臥位への体位変換を嫌がります. ハイハイをするときは,左右に手足が交互に出る(交互性),右手が出るときに左足が出る,左手が出るときに右足が出る(交差性)という協調した体のなめらかな動きが必要です.シャフリングでは,目的に向かって自動的に協調した手足の運動(ロコモーション)が経験できません.さらに,床座位のまま移動すると,手を床について身体を支える経験をしないため,手掌のアーチ形成が不十分になり,手先の不器用さにつながります. 対処法は,できるだけ早期に椅子座位や立位姿勢を取らせ,立ったり座ったり,膝を屈伸(スクワット)することで,膝や足首の筋肉を強化します.シャフリングを始めた子どもをハイハイ姿勢に戻すことは,子どもの視点を下げることになり,子どもの知的要求の面からも難しいで体軸を整える(a)仰向けでの頭部の左側屈.(b)うつ伏せでの頭部左側屈.(c)体軸を整えると,180°の追視ができるようになった.図6abc
元のページ ../index.html#7