2)トランスファーボードとモジュラー型車イスの導入患者さんが気にしていたのは,何よりもトイレだった.マンションのトイレは開口部が比較的広かったが,車イスからトイレに乗り移ったり,ベッドに戻ったりするのが不安であった.比較的小さな体格だっだが,ベッドから抱えられて車イスに移動するのは,パートナーの手によるとはいえども技術的不安もあり,痛みの発生を考えると,当初は恐怖心のため,まったくできなかった.そこで,福祉機器を導入することにした.つまり,トランスファーボードとモジュラー型車イス,という福祉機器の組み合わせで移乗動作を行い,電動昇降式ベッド,車イス,洋式トイレ(ウォシュレット付き)の間の移乗をパートナーの一人介助でできるようにしよう,と考えた(図1).3)福祉機器は使いこなす自信が必要一般に道具類は,たとえ福祉機器類であったとしても,使いこなすことが重要である.裏を返せば,使いこなせない道具は事故の元である.そこでまず,医療者が道具の使い方を実演してみせる.なぜなら,これまでの患者さんの人生で,立ち上がらずにベッドから出たり,トランスファーボードを利用して車イスに乗ったりした経験がないからだ.いきなり,訳がわからないまま本番を行うのではなく,どのような状況になるのか患者さんに実物を見てもらい,安心感をもってもらうことが大切である.ベッドと車イスをトランスファーボードでつなぐ.ちょうど地上40センチでベッドと車イスの間で橋を渡すような形になる.このような環境設定と道具立てを行えば,座った姿勢のまま,移動先を移動元より若干(2〜3センチ)低く設定し,位置エネルギーを利用すれば,ボードの上を身体が滑るように移動することができる,とのイメージを患者さんにもってもらう.次に,医療者が実演したのと同様の動作を患者にしていただく.もちろん,医療者が隣に寄り添い,身体の使い方について段階を追って説明し,実施していく.94第Ⅱ章 事例から進めてみる終末期リハビリ
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