2688てんかん研究・診療の進歩
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12第 56 回日本てんかん学会学術集会を 2023 年 10 月 19 日(木)〜10 月 21 日(土)の3 日間,京王プラザホテル(東京)において開催した.今回のテーマは,「誰もとり残さない医療」(Leave no epilepsy patient behind)とした.2018 年から厚生労働省と自治体が主体となった,「てんかん地域診療連携体制整備事業(てんかん整備事業)」が本事業として開始された.てんかん整備事業は,てんかん医療のすそ野をひろげ,まさに「誰もとり残さない医療」を目指すものである.2023 年度には,てんかん支援拠点病院が 30の都道府県に指定設置されるまで事業が進捗した.同時に世界保健機関(World Health Organization:WHO)では,2022 年に領域横断的なてんかんと神経疾患の世界的行動指針(intersectoral global action plan:IGAP)が承認され,「てんかん患者の 90%がてんかんは治療可能な病気であることを知り,80%が適切な抗てんかん発作薬を享受することができ,70%が良好な発作コントロールをもつことを目指す」という行動計画が示された.本学会でも「IGAP:その取り組みと求められる成果」というテーマで,国際抗てんかん連盟,国際てんかん協会,日本てんかん学会,日本てんかん協会とともにシンポジウムを開催した.2023 年,日本てんかん協会が設立 50 周年を迎えた.本学会は日本てんかん協会 50周年記念総会と連携しながら,てんかん患者,家族,介護者,医療関係者がともに会場に集い,お互いの理解を深め,よりよいてんかん診療を目指した学術集会を開催した.わが国のてんかん医療は,これまで小児科・精神科・脳神経内科・脳神経外科等の診療科により担われてきた経緯があり,その結果,多くの地域で,どの医療機関がてんかんの専門的な診療をしているのか,患者ばかりでなく医療機関においても把握されていない状況が生まれている.一般の医師へのてんかん診療に関する情報提供や教育の体制はいまだ整備されていない等,てんかん患者が地域の専門医療に必ずしも結びついていない.このような現状を踏まえ,各都道府県において,てんかん対策を行う医療機関を選定し,てんかんの治療を専門的に行っている医療機関のうち 1 か所をてんかん診療拠点機関として指定し,専門的な相談支援,他の医療機関,自治体等や患者の家族との連携・調整をはかる「てんかん地域診療連携体制整備事業」が 2015 年からモデル事業として開始された.3 年間のモデル事業を経て,2018 年から本事業となった.てんかん診療拠点機関の業務は,てんかん患者およびその家族への専門的な相談支援および治療,管内の医療機関等への助言・指導,精神保健福祉センター,保健所,市町村,福祉事務所,公共職業安定所等との連携・調整, 医療従事者,関係機関職員,てんかん患者およびその家族等に対する研修の実施,中川栄二政     策第 1 部|てんかん研究・診療の最前線「誰もとり残さない」てんかん医療体制の構築 1 てんかん地域診療連携体制整備事業 1 てんかん地域診療連携体制整備事業 てんかん地域診療連携体制整備事業 てんかん地域診療連携体制整備事業 てんかん地域診療連携体制整備事業

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