2688てんかん研究・診療の進歩
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第1部てんかん研究・診療の最前線てんかん患者およびその家族,地域住民等への普及啓発活動である.このてんかん支援事業で重要な役割を果たすのが,てんかん診療支援コーディネーターである.コーディネーターの要件は,精神障害者福祉に理解と熱意を有し,てんかん患者およびその家族に対し,相談援助を適切に実施する能力を有し,医療・福祉に関する国家資格を有することである.そこでコーディネーターの教育,育成のためコーディネーター研修・認定制度を 2020 年から開始した.また,てんかん診療のすそ野を広げるため「てんかん支援ネットワーク」として全国のてんかん診療を行っている医療施設を全国てんかん支援拠点のホームページ(https://epilepsy-center.ncnp.go.jp)で公開している.てんかんの医療の均てん化に向けたてんかん支援拠点の整備を進めるためには,支援拠点の「数」を求めるだけでなく,「質」も求める形で事業を進めていく必要がある.本事業は義務的事業ではなく裁量的補助事業であることから,地方自治体の予算措置はハードルが高い.そのため,引き続き本事業の実績と効果をあげるとともに,広く国民や社会に目に見える形でその成果をアピールしていくことが必要である.精神障害者が,地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう,精神科医療・一般医療,障害福祉・介護,住まい,社会参加(就労),地域の助け合いが包括的に確保された地域包括ケアシステムの構築を目指す必要がある.このような精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築にあたっては,計画的に地域の基盤を整備するとともに,市町村や障害福祉・介護事業者が,精神障害の程度によらず地域生活に関する相談に対応できるように,圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて,精神科医療機関,一般医療機関,地域援助事業者,市町村等の重層的な連携による支援体制を構築することが必要である.各都道府県では,国の定める基本方針に基づき,地域の実情に応じて 医療提供体制を充実させるために医療計画を作成している. 医療計画は原則 6 年ごとに改定され,第 7 次医療計画 (2018〜2023 年度)を経て,2024 年度からは第 8 次医療計画に基づいて医療計画が実施されている.5 疾病・6 事業は,この医療計画に記載されている重要なテーマであり,疾病や事業ごとの医療資源,医療連携に関する現状を把握し課題の抽出や見直しが行われている.5 疾病として,がん,脳卒中,心筋梗塞等の心血管疾患, 糖尿病,精神疾患があげられているが,てんかんは,統合失調症,うつ病等,認知症,児童・思春期精神疾患,発達障害,依存症,PTSD(post-traumatic stress disorder),高次脳機能障害,摂食障害,精神科救急,身体合併症,自殺未遂,災害医療,医療観察とともに,15 の精神疾患・状態の 1 疾患として政策対応がなされている1)〜9).てんかんは,小児から高齢者まで,どの年齢でも誰でもが発症する可能性がある.罹病率が 0.8〜1%と患者数の多い病気であり,わが国では約 100 万人の患者がいると推計され31 「誰もとり残さない」てんかん医療体制の構築 2 医療計画とてんかん医療政策 2 医療計画とてんかん医療政策 医療計画とてんかん医療政策 医療計画とてんかん医療政策 医療計画とてんかん医療政策 3 てんかん 3 てんかん診療の課題 てんかん てんかん診療の課題 てんかん

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