薬剤抵抗性てんかんとは,そのてんかんに対し適切とされる抗てんかん発作薬を 2 種類試しても 1 年以上,発作を抑制できないてんかん,と定義されている1).薬剤抵抗性てんかんに対して原因を再検討したうえで,真の薬剤抵抗性てんかんと診断された際に,外科治療の介入を検討する必要がある.てんかん外科医が,外科治療介入を検討する際に考える必要があるのは,てんかん焦点の同定,および機能的領域の同定である.発作症候からてんかん焦点の仮説を立て,それを,脳波所見や画像所見で実証していく必要がある.非侵襲的検査で実証された場合には一期的に開頭焦点切除術を行うが,焦点同定困難である場合には頭蓋内電極留置術を行い,てんかん焦点同定および機能マッピングをしたうえで,開頭焦点切除術の可否を決定することとなる.頭蓋内電極留置術は,従来は硬膜下電極を用いた手法が一般的であったが,わが国でも,2020 年に深部電極を用いたロボット支援下定位的頭蓋内電極留置術(stereotactic EEG:SEEG)が保険収載された.これにより,今まで,評価困難であった深部病変や,広範囲にわたる電極留置も可能となり,各施設で SEEG が行われている.本稿では,てんかん外科医の立場から,薬剤抵抗性右前頭葉/側頭葉てんかんに対してSEEG を行った 1 例に対する治療アプローチについて述べる.なお,同症例は,他院で精査加療された症例であり,第 56 回日本てんかん学会学術集会スポンサードシンポジウム2「てんかん外科治療の今〜あなたが担当医ならどう治療しますか〜」内で議論された症例である.20 歳代前半男性,右利き,言語優位半球は左.既往歴に開頭鞍上部腫瘍摘出術.初 発 発 作 は 21 歳. 発 作 型 は, 焦 点 意 識 減 損 発 作(focal impaired awareness seizure :FIAS),運動亢進発作(hyperkinetic seizure).前兆は不明.発作症候としては,ぼーっと立っていた,両手で手悪さをする,夜間,ベッド上で足をバタバタ蹴るが覚えていない.発作頻度は,日単位.発作持続時間は,30 秒〜1 分程度.ウェクスラー成人知能検査(WAIS)動作性 IQ 65,全検査 IQ 70.ウェクスラー記憶検査(WMS-R)言語性 78 注意集中力68,遅延再生 61.抗てんかん発作薬は ZNS(ゾニサミド),LEV(レベチラセタム),VPA(バルプロ酸).頭部 MRI(magnetic resonance imaging)では,両側(右優位)前頭葉内側 T2高信号を認める(図 1 上段).FDG-PET(fl uorodeoxyglucose positron emission tomography)では,右前頭葉眼窩面,右外側側頭葉に低代謝を認めた(図 1 下段).SEPCT(single photon emission computed tomography)は,FDG-PET と同所見である.ビデオ脳波検査では,飯村康司臨 床216第 1 部|てんかん研究・診療の最前線薬剤抵抗性てんかんの理解:脳波・症候学・画像をもとにした治療アプローチの実際 1 症 症 1 症 例 症 症 例30
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