2689産婦人科ゲノム医療の必修知識
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婦人科悪性腫瘍とゲノム異常3 Partれる.測定原理はキャプチャーシーケンス法により,対象遺伝子に対しておもにエクソン領域にプローブを設計し,キャプチャープローブとのハイブリダイゼーションを用いて特定の遺伝子(ゲノム領域)について,NGSで配列決定するものである.保険適用は,標準治療がないもしくは終了後(見込みも含む)の進行再発固形がんに限られ,生涯で1回のみ可能である.2.がんゲノム医療の目的 がんゲノム医療の第一の目的は,ゲノム異常にマッチした薬剤の選択である.基本的には標準治療の選択肢がほとんど残されていない人が対象で,新たな治療法がみつかることへの期待が大きい.そのほかに,肉腫をはじめとして,組織学的な診断に有用なゲノム異常が検出されることがしばしばあり,遺伝性腫瘍にかかわる生殖細胞系列病的バリアント[いわゆる二次的所見(secondary findings:SFs)]が検出され,血縁者を含めた健康管理に活かせる場合がある.第一の目的である新規治療法への到達率のみが語られることも少なくないが,婦人科医として,診断への有用性,遺伝性腫瘍診療につながる可能性については留意しておきたい.長期的な観点では,がんの生物学的特性のより深い理解や,ゲノム医学の発展に貢献することも期待される.がんゲノム医療提供体制とエキスパートパネル がんゲノム医療実施施設は,がんゲノム医療中核拠点病院,拠点病院,連携病院に分けられる(図1)2).2025年1月1日時点で,13の中核拠点病院,32の拠点病院,230の連携病院が指定されている.また,保険診療上,検査結果を適切に解釈するためのエキスパートパネル(専門家会議)が全例で求められており,必要な構成員(がん薬物療法の専門家,遺伝医学の専門家,遺伝カウンセリング技術を有する者,病理医,分子遺伝学やがんゲノム医療の専門家,バイオインフォマティクスの専門家など)が定められている. 中核拠点病院,拠点病院は,自施設でエキスパートパネルを開催し,検査結果の解釈,治療推奨などを討議し,エキスパートパネル報告書を作成する.エキスパートパネル報告書には,検出されたゲノム異常の臨床的意義,エビデンスレベル(表1)3)を記載し,対応する薬剤(国内承認薬,FDA承認薬,臨床試験情報)の情報,SFsについてのコメントも記載される. 連携病院は中核拠点,拠点病院のいずれかと連携し,エキスパートパネルに参加する形式が基本である(一定の要件を満たす連携病院では自施設でエキスパートパネルを実施することも認められている).その他,中核拠点病院には,先進医療・治験の実施,研究開発,人材育成,教育が求められる(図1). わが国のCGP検査の臨床情報,検査データは,国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics:C‒CAT)に集約されている.医療機関に返却されるC‒CAT調査結果(ゲノム異常の臨床的意義や薬剤情報が記載)はエキスパートパネルで活用され,またわが国独自のデータベースとして研究目的の利活用も行われている.1093 がんゲノムプロファイリング検査

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