2689産婦人科ゲノム医療の必修知識
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12*:正常組織を用いずに検査する方法もある.有用なマーカーの1つとなっている. MSI検査の目的がいずれであっても,得られた検査結果に対しては双方の目的への対応を考慮する必要がある.dMMR判定検査 dMMRを判定する検査法としておもに,①マイクロサテライト不安定性(MSI)検査,②MMR蛋白に対する免疫組織化学染色(IHC)検査,③次世代シーケンサー(NGS)による包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査を用いた判定の3つがある(表1).1.MSI検査原 理 DNAポリメラーゼがDNAを複製する際に誤った塩基対を合成することがある.その変化はマイクロサテライトといわれるゲノム上の単純な反復配列領域に起こりやすいが,MMR機能が保たれていれば,正しい塩基対に修復される.しかし,MMR機能が欠損していると修復することができず,マイクロサテライト領域の変化がDNAの複製をとおしてそのままゲノムに固定されてしまう.この現象をMSIという.このマイクロサテライトの変化を測定する方法としてMSI検査があり,MMR機能が損なわれているかどうかを間接的に評価する(図1,2).方法・判定 具体的には正常組織と腫瘍組織のDNA中のマイクロサテライト領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で増幅して反復回数の変化を塩基の長さの違いとして調べる.ヒトゲノム内には多数のマイクロサテライトが存在しており,通常,MSI検査に適したマイクロサテライト領域を5つ以上用いて判定する.検査の結果,本来とは異なる反復回数が出現した場合をMSI陽性とよび,調べたマイクロサテライト領域数の30%以上で陽性になる場合を高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI‒High)とよぶ1).通常,5か所のマイクロサテライト領概 要マイクロサテライト領域の塩基数変化からMMR機能が失われていないかを間接的に調べるMMR蛋白質の発現異常(おもに発現消失)がないかを抗体を用いて直接調べる解析したゲノム領域内に存在するマイクロサテライト(単純反復配列)の変化を統計学的に処理して評価する.また,塩基置換や挿入・欠損のパターン(mutationalsignature),起こった変異の頻度(TMB),MMR遺伝子のバリアントなどを総合的に評価する用いる試料腫瘍細胞,正常細胞*のDNA腫瘍組織の病理標本免疫組織化学腫瘍細胞,正常細胞*のDNA検出法PCRと電気泳動シーケンシングと統計学的処理表1 dMMR判定検査140Part 3 婦人科悪性腫瘍とゲノム異常検査名①マイクロサテライト不安定性(MSI)検査②免疫組織化学染色(IHC)検査③包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査

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