*1: 孤立性胃静脈瘤は形態と位置により分類される.Lg‒f(fundal type)は胃底部に限局する型,Lg‒cf(cardio-fundal type)は噴門から胃底にかけて連続して存在する型を指す.内視鏡的・画像的評価に基づき分類され,治療選択に重要である.*2: CARTO:胃静脈瘤および肝性脳症に対する治療法で,順行性と逆行性アプローチを併用し瘤の確実な閉塞を図る手技である.CARTO I ではコイル単独,CARTO II ではコイルと 5% EOI,CARTO III ではコイルと NBCA を用い,いずれも即時の物理的閉塞を実現する.病態に応じて適切な手法が選択される. 1 診断・適応判断の流れ254 副作用としては,5%EO による溶血に伴う血尿や,極めて稀な急性腎不全の発症が報告されている. 内視鏡的に食道静脈瘤を伴わず,胃腎シャントを通じて胃内腔に突出する静脈瘤であり,胃穹窿部静脈瘤(Lg‒f)ま た は 噴 門 穹 窿 部 静 脈 瘤(Lg‒cf)を指す(図 1).一方,食道から連続する胃噴門部静脈瘤(Lg‒c)は通常,胃腎シャントを有さず,BRTO の適応とはならない. 胃静脈瘤破裂時には,まず緊急内視鏡により出血点(Lg‒f,Lg‒cf)を確認し,NBCA(N‒butyl‒cyanoacry-late)(ヒストアクリル®)による内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy:EIS)にて止血を行う.その後,マルチスライス CT(MDCT)や MR 血管造影(MRA)により血行動態を確認し,胃腎シャントが確認されれば,予防的または待機的に BRTO が適応となる. 2 手技の手順と工夫 手技は経頸静脈的あるいは経大腿静脈的アプローチにより,胃腎シャントへ逆行性にカテーテルを挿入し,バルーン閉塞下逆行性静脈造影(balloon occluded retro-grade venography:BRTV)(図 2)を行ったうえで,5%EO により塞栓を行う. 側副路の Hirota 分類3)に準じて胃腎シャント例が主体であるが,胃静脈瘤の本体を造影するために,側副路である左下横隔膜静脈方向への血流に対しコイル塞栓術(coil‒assisted retrograde transvenous obliteration:CARTO)*2 を余儀なくされる症例が約 3 割存在する.また,胃腎シャントを伴わず,左下横隔膜静脈シャント単独での孤立性胃静脈瘤(Lg—f,Lg—cf)*1 図 1 内視鏡所見➡口絵 13
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