*1: 急性循環不全:心臓から全身臓器への血液供給が滞り,臓器が機能不全に陥る状態.原因は出血,感染症,心不全など多岐にわたり,放置すると臓器障害が進行し,生命に関わる危険な状態となる.*2: ショック肝:肝血流低下に起因する虚血性肝障害.原因として,心不全,循環血液量減少,重症感染症などがあげられる.主な病態は,肝臓への酸素供給不足による肝細胞壊死であり,AST,ALT などの肝酵素が急激に上昇する.重症例では,肝不全や多臓器不全に至ることもある.*3: 閉塞性黄疸:胆管が閉塞し胆汁が十二指腸へ流れなくなることで,Bil が血液中に蓄積し,皮膚や白目が黄色くなる状態.主な原因は,胆石や胆管がん,膵臓がんなどである.尿が濃くなり,便が白っぽくなその他の特徴LDH/AST 比4 以下5 前後5~1510~2020~4015 以上PM:多発性筋炎,Hp:ハプトグロビン.10想定される疾患肝疾患心筋梗塞筋ジストロフィー,PM膠原病,ウイルス感染症,皮膚炎溶血性貧血白血病,悪性リンパ腫,肺がん,胃がんることがある.放置すると,肝障害や全身状態の悪化をきたす. 表 4 LDH/AST 比と想定される疾患関連肝疾患(ALD),薬物性肝障害(DILI),急性循環不全*1 によるショック肝*2,うっ血性心不全を考慮し,問診,各種ウイルスマーカー,腹部 CT,腹部超音波検査などにより総合的に診断する. 100~500 U/L の場合は,B 型慢性肝炎,C 型慢性肝炎,AIH,原発性胆汁性胆管炎(PBC),DILI,代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD),ALD,閉塞性黄疸*3,急性胆道疾患などを疑って検査を進める.胆管炎などを合併した場合を除き,通常の閉塞性黄疸ではトランスアミナーゼが 300 U/L を超えるような著しい上昇をみることは少ない. 100 U/L 未満の場合は,慢性肝炎,DILI,ALD,MASLD,肝硬変,胆汁うっ滞性肝疾患などを考慮する.黄疸を伴う際には,高直接ビリルビン(D‒Bil)血症の有無を確認し,肝細胞障害性黄疸か胆汁うっ滞性黄疸かを判断する.AST,ALT はビタミン B6を補酵素とするトランスアミナーゼであるため,腎不全患者,イソニアジド,D‒ペニシラミン,エタノール投与によるビタミン B6欠乏患者では,AST,ALT が低値となることに注意する.CK 値の上昇AST 値,LDH 値の上昇,ALT 値は上昇しない,Hp 低下
元のページ ../index.html#4