2691肝臓まるかじり
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第I部検査*4: ハプトグロビン(Hp):肝臓で作られる蛋白質で,血液中のヘモグロビン(Hb)と結合し,腎臓へのダメージを防ぐ働きがある.そのため,血液中の Hp 量を測定することで,溶血性貧血などの診断に役立つ.*5: 肝胆道系酵素:肝臓や胆道に障害が起こると血液中に漏れ出して数値が上昇する.代表的なものとして,LDH,AST,ALT,ALP,ChE などがある.これらの酵素の上昇原因として,アルコール多量摂取,脂肪肝,胆管閉塞,悪性腫瘍,胆石症,胆囊炎,胆管炎などがある.B 血液検査 | 2 一般肝機能検査 2 AST/ALT 比―ALT 優位(AST<ALT) AST は肝臓全体に分布するが,ALT は主として門脈周辺域(zone 1)に分布する.また,肝臓全体には AST が ALT の約 3 倍存在する.そのため,ALT が多く含まれる門脈周辺域の細胞が障害を受ける慢性肝炎では,ALT の半減期が AST より長いため,ALT 優位となる. 3 AST/ALT 比―AST 優位(AST>ALT) ALD,DILI では,ALT の比較的少ない小葉中心域(zone 3)の肝細胞の障害を起こすため,AST 優位となる.肝硬変,進行肝がんなどでは,肝血流の低下に伴い,ALTの活性が低下し,AST 優位となる. LDH は,急性肝炎,溶血性貧血,悪性貧血,心筋梗塞,白血病,悪性リンパ腫,悪性腫瘍,横紋筋融解症などによって上昇する酵素である.肝臓以外にも心筋,骨格筋,赤血球,白血球など多くの臓器・細胞に存在するため,臓器特異性は低い.LDH が著明に上昇している場合,どの臓器が原因で上昇しているのかを鑑別する必要がある.この鑑別に,LDH/AST 比が役立つ(表 4). 肝臓では AST に比較し LDH 活性は 2 倍程度であるのに対し,心筋では 5 倍,骨格筋では 7 倍,赤血球では 25 倍,白血球では 15 倍,白血病細胞では 15 倍以上にもなる.また,肝疾患では LDH/AST 比はおおむね 4 以下であることに留意する.LDH/AST 比が 5 以上であれば溶血性疾患を疑い,ハプトグロビン(Hp)*4,Fe などの測定が必要となる.心筋梗塞や筋疾患においても AST 値と LDH 値が上昇し,ALT値は上昇しない.この場合には CK の上昇を伴う. 急性肝炎では,AST 値,ALT 値より 1 週間ほど遅れてピークに達する.Bil の持続上昇または改善がない場合には,肝炎の重症化か胆汁うっ滞性を考慮する.また,肝胆道系酵素*5 が著明に増加している場合は,腹部 CT,腹部超音波検査により胆管拡張の有無,periportal edema(門脈周囲の浮腫)(CT では門脈周囲低吸収域:peri-portal collar),胆囊壁の肥厚を確認し,胆管の機械的閉塞による閉塞性黄疸か肝内胆乳酸脱水素酵素(LDH)ビリルビン(Bil)11

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