2692心不全治療薬レベルアップセミナー
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アゾセミド(ダイアート®)長時間作用型のループ利尿薬です.フロセミドよりアゾセミドのほうが,心血管死や心不全増悪による入院が抑制されるとする報告 9)や,心不全における腎保護作用に期待できるとする報告 10)があり,長期間内服投与を継続する場合にはアゾセミドへの切り替えも検討されます.トラセミド(ルプラック®)作用時間はフロセミドとアゾセミドの中間です.ループ利尿薬の作用に加えてアルドステロン受容体拮抗作用を併せ持つとされています.作用時間が長めのフロセミドと,ごく少量のスピロノラクトン(アルダクトンⓇA)が合わさったようなイメージを持つといいでしょう.つまり,他のループ利尿薬と比較して低カリウム血症をきたしにくいというメリットがあります.トラセミドとフロセミドを比較した研究で,心血管イベントの発症率がトラセミド群で有意に少なかったとする報告 11)もありますが,2023年のTRANSFORM- HF試験では,心不全入院症例の退院後,トラセミドとフロセミドで比較したところ,心血管死に有意差はなかったと報告されています 12).ループ利尿薬の投与方法6ループ利尿薬を常用していない場合,腎機能が正常な患者では,フロセミド10~20mgの静注から開始するのが一般的です.腎機能低下患者における初期投与量は,血清クレアチニン値×20mgを目安に設定し,尿量反応を見ながら適宜増減します.Felkerらの総説によると,慢性心不全患者の急性非代償期におけるループ利尿薬の初期静注量は,外来維持量の2.5倍程度とすることが,DOSE試験で安全性と有効性が示されています.例えば,外来で1日2回,フロセミド40mgの経口投与を行っている患者では,入院時の初期静注量はフロセミド100mgを1日2回投与とし,投与後のNa再吸収を考慮し,ループ利尿薬の静注は1日2回以上に分けて行うべきであるとしています 6).その後の投与量調整は,初期投与量に対する臨床反応を見ながら行います.十分量のループ利尿薬投与により,2時間以内に尿量が明らかに増加す第2章 心不全治療薬28

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