除脂肪体重の減少,脂肪の増加筋力低下,筋機能低下心臓容積の減少,起立耐性の低下骨密度の低下,骨粗しょう症最大酸素摂取量の低下表1 微小重力の身体への影響の例身体組成筋系心血管系・循環系骨代謝系酸素摂取量に向けて,微小重力の人体への影響を調べるために行われた実験です2,3).水平もしくは頭部を6°下げたベッドに横たわり,数日~100日以上にわたる臥床を続けて身体への影響を調べます.筆者も日本国内で行われたベッドレスト実験に参加し,この実験により,健康な若年成人が10日間寝たきりになると起立耐性の低下,すなわちODの状態が起こることを報告しました4).このように身体活動の低下,つまり極度な運動不足によるデコンディショニングが,ODの症状を引き起こしたり,より増悪させることを知っておく必要があります.では長期臥床により,循環系にどんなことが起こるのでしょうか5).私たちの身体のなかの水分の移動を考えてみると,体液は重力の影響を受けなくなると頭方に移動します.すると心臓に戻ってくる静脈血液量が減少します.これによって心拍出量が増加すると,私たちの身体は末梢の血管抵抗を減らして血圧を一定に保とうとします.一方,上体への体液移動は慢性的な体液量の増加と判断され,バソプレシン,アルドステロン,心房性ナトリウム利尿ぺプタイドによる利尿が起こります.さらに上体にたまった体液量を減らそうとする働きにより,全身を循環する血漿量が減少します.運動不足でデコンディショニングが起こるのであれば,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による自粛生活でデコンディショニングが起こったのか,という疑問がわくでしょう.答えはイエスです.コロナ禍の2021年,米国で学校閉鎖前後の健康な子どもの心肺機能試験の比較において,休校後に運動耐容能が低下した,すなわちデコンディショニングが起こったと報告されています6).そして,この論文では遠隔授業は教育上のニーズに対応できても運動にとって代わることはできないと述べており,これはたいへん貴重な示唆と考えます.138Chapter 5▲最新のトピックス長期臥床で何が起こるの?新型コロナウイルス感染症拡大とデコンディショニング
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