1 「朝起きられない」は違う!? 起立性調節障害の症状13起立性調節障害はどんな病気?判定・大1,小3・大2,小1・大3以上の場合をODとする〔大国真彦:学校における起立性調節障害について.健康教室13:324-328, 1962〕ODは,横になった状態から座ったり立ち上がったりする,あるいは座った状態から立ち上がるといった体位の変換(=起立)の際に,体内の血液の循環を調節するしくみがうまくいかず循環調節不全(=調節障害)をきたします.血液の循環がうまくいかないと身体にどんなことが起こるか,それが朝起きづらいとか立ちくらみ,動悸といった起立失調症状であり,「朝起きられない病気」といわれる所以です.ODの症状は朝起き不良,朝の食欲不振,立ちくらみ,全身倦怠感,頭痛,動悸,など多彩であり(図1),それらの症状は午前に強く午後から夜にかけて軽快するのが特徴です1).では,ODはなぜ最近注目されるようになったのでしょうか.日本における子どものODが最初に報告されたのは1958年のことであり2),このとき,小児OD 研究班が組織され,ODの診断基準が作成されました(表1)3).この当時,ODの子どもが小・中学生の5~7%4)と高い頻度でみられるものの,経過は良好で,一般には治療によく反応しやすい5)と考えられていました.また,前思春期より思春期にかけての身体発育と循環器系の発育,あるいは内分泌系の変調などがこのような症状をきたす6)と考えられていました(図2).私が医師になった頃には,時々「朝礼で倒れたので,貧血じゃないか心配で受診しました」「朝は顔色が悪く朝食を食べられなくなった」といった主訴で受診する患者さんに,採血など一般的な検査を行い,表1 ODの診断基準大症状: A.立ちくらみあるいはめまいを起こしやすい B.立っていると気持ちが悪くなる,ひどくなると倒れる C.入浴時あるいはいやなことを見聞すると気持ちが悪くなる D.少し動くと動悸あるいは息切れがする E.朝なかなか起きられず,午前中調子が悪い小症状: a.顔色が青白い b.食欲不振 c.臍疝痛(強い腹痛)を時々訴える d.倦怠あるいは疲れやすい e.頭痛をしばしば訴える f.乗物に酔いやすい g.起立試験で脈圧狭小16mmHg以上 h.起立試験で収縮期血圧低下21mmHg以上 i.起立試験で脈拍数増加1分21以上 j.起立試験で立位心電図のTI,IIの0.2mV以上の減高,その他の変化その他:注目されるようになったのはなぜ?
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