2696褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2025
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ステートメント❶ 褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)は WHO 分類により,神経堤組織(副腎髄質,傍神経節)のクロム親和性細胞から発生する神経内分泌腫瘍と定義される.すべての PPGLは潜在的に転移リスクがあるため,「良性」「悪性」の表現は用いない 1A .❷ 外科切除による治癒可能性,カテコールアミン過剰による高血圧,心血管系合併症のリスク,潜在的な転移リスク,遺伝性のリスクなどから,早期診断・治療が推奨される 1A .❸ 臨床所見から PPGL を強く疑う「PPGL 高リスク群」では積極的にスクリーニング検査を実施し,機能診断と画像診断を合わせて診断する 1B .エビデンス第Ⅰ章 褐色細胞腫・パラガングリオーマ A 疾患概念 褐色細胞腫(PCC),パラガングリオーマ(PGL)はそれぞれ,副腎または傍神経節のクロム親和性細胞に由来する腫瘍であるが,疾患概念は歴史的に大きく変貌しており,最近は,世界保健機関はこれらを包括してパラガングリオーマと総称し,神経堤組織に由来する神経内分泌腫瘍と定義している7).しかし便宜上は,副腎から発生した場合を PCC,副腎外に存在する傍神経節から発生した場合を PGL,両者を総称して褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)と呼ぶ. B 分類 腫瘍の局在・発生部位による疾患名(呼称)のほか,発生の起源が交感神経性か副交感神経性か(交感神経性 PPGL,副交感神経性 PPGL),カテコールアミン過剰産生の有無(機能性,非機能性),カテコールアミン過剰症状の有無(症候性,無症候性),PPGL 感受性遺伝子病的バリアントの有無(遺伝性,孤発性),病的バリアントを有する遺伝子の種類(クラスター 1,クラスター 2,クラスター 3),転移の有無(非転移性,転移性)など,異なる観点からの分類がある.従来,良性,悪性の用語が使用されてきた.しかし内分泌腫瘍の WHO 腫瘍分類2,8)では,すべての PPGL は非転移性である確実な根拠がなく,潜在的に転移性であることから悪性腫瘍の疾患コード(ICD—03)が付与され,「良性」の表現は使用しないことになった.わが国の PPGL ガイドライン 20181)では実診療での混乱をさけるために転移性あるいは局所浸潤性病変を有する場合は「悪性」と表現,それらが確認されない場合には「良性」と表現したが,本ガイドライン以降は明らかな転移がある場合に「転移性」を用いることとした. 交感神経性 PPGL は全 PPGL の約 90%で,通常カテコールアミン過剰産生があり,それによる発作性の動悸,頭痛,頻脈,発汗,高血圧などを呈する.約 80%が副腎から発生(PCC)し,そ21 総 論

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