ステートメント❶ カテコールアミン非産生腫瘍が多く無症状であるため,内分泌学的検査による診断が困難な場合が多い.カテコールアミン産生腫瘍の場合は周術期管理のために血漿遊離メタネフリン分画や 24 時間尿中メタネフリン分画の測定が推奨される 1C .❷ 孤発例,遺伝性を問わず約 1/3 の症例がドパミン過剰産生を示すため,ドパミン代謝産物の 3‒メトキシチラミン測定が推奨されるが,わが国では保険未収載である 1B .❸ 遺伝性の頭頸部パラガングリオーマ(HNPGL:head and neck paraganglioma)は,SDHDの生殖細胞変異病的バリアントを示すことが多く,多発性が多いため,全例遺伝子検査をすることが推奨される 1C .❹ 画像診断は原発巣・多発腫瘍・転移性腫瘍検索に必須で,全身造影 MRI,頭蓋底造影 CT とともに,核医学検査(18F‒FDG PET/CT および123I‒MIBG シンチグラフィ)の施行が推奨される 1C .❺ 術前病理診断としての穿刺針細胞診は,病理学的正診率の低さから推奨されない 2D .❻ ほとんどの HNPGL はカテコールアミン非産生腫瘍で,増大が緩徐なため,術後の合併症を回避する観点から監視療法が第一選択となるが,ハイリスク群では外科的切除や放射線療法,多発・遠隔転移例では核医学治療や化学療法など集学的治療を行うことを推奨する 1C .エビデンス第Ⅰ章 褐色細胞腫・パラガングリオーマ A 概要 頭頸部パラガングリオーマ(HNPGL:head and neck paraganglioma)は,主に副交感神経の傍神経節非クロム親和性細胞から発生する稀な神経内分泌腫瘍102)で,グロームス腫瘍とも呼ばれていたが,WHO により HNPGL との呼称に統一された.発生頻度は 100 万人あたり 0.5 人と稀な疾患で,30~50 歳女性に多い103).HNPGL の発生部位による分類では,約 60%が頸動脈小体PGL で最多であり,頸静脈球鼓室 PGL が約 30%,迷走神経 PGL が約 10%で,極めて稀に喉頭,眼窩,気管,甲状腺,鼻腔からの発生も報告されている104,105).これらの主な HNPGL の発生部位の解剖学的位置を図 1 に示す. B カテコールアミン産生性 HNPGL は副交感神経傍神経節に由来し,カテコールアミン分泌を示すものは約 4%と稀である106).単施設による 152 例,182 腫瘍による検討で,臨床的に有意なカテコールアミン過剰分泌が認められた症例は 9.2%,腫瘍ベースで 7.7%にとどまり,分泌過剰を認める症例においてもほ31断・治療8 頭頸部パラガングリオーマの診
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