医療的ケア児の栄養管理各論微量栄養素の欠乏の予防・早期発見 乳児はビタミンK欠乏を予防するために,哺乳確立時,分娩施設退院時,1か月健診時に3回ビタミンK2を内服させる方法(3回法)と生後3か月まで1週毎に13回内服させる方法(3か月法)がある.いずれにせよ,しっかりビタミンKを内服させることを忘れてはならない.特に母乳栄養児や肝胆道疾患児には必須である.ビタミンKは腸内細菌でも合成され,吸収される,したがって経口抗菌薬の長期使用もビタミンK欠乏をきたす. 母乳の鉄含有量は,乳児調整粉乳に比べて著しく少ない.乳児期後期に適切に離乳食が進まないと,鉄欠乏になる.離乳食を適切に進めることが大切である.牛乳にも鉄は少ない,したがって乳幼児では離乳食にフォローアップミルクなどを積極的に使用するのが鉄欠乏を予防するのに勧められる. 豚・鳥・牛レバーなどのヘム鉄は吸収がよい.野菜などの非ヘム鉄は吸収が悪く,ビタミンCやクエン酸などの併用で吸収がよくなる. 亜鉛トランスポーターであるZnT2遺伝子異常症により亜鉛をほとんど含有しない母乳を出す母親がいる.亜鉛の乳腺細胞から乳汁への分泌障害である.母親には全く亜鉛欠乏の症状はない.こどもでは皮膚炎(臀部や口などの開口部の周囲),脱毛などの症状をきたす.症状から血清亜鉛を測定して,診断されることも多い. 近年,亜鉛の製剤やサプリメントを用いることによる銅欠乏が報告されている.投与する亜鉛:銅は10:1が望ましいとされている.また,腸瘻から栄養剤を投与すると,本来なら胃十二指腸で吸収される銅が吸収されず欠乏になる. 微量栄養素は,一般的な検査ではなく,症状から欠乏・過剰症を疑って検査し,診断することが多い.したがって,欠乏による症状に注意を払い,早期に診断し対応することが大切である.表2に微量栄養素欠乏で発症しやすい所見を示す.このような症状が見られた場合は,微量栄養素の欠乏を疑って検査することが大切である.69 表2 まれでない症状から疑う栄養素不足症状欠乏が疑われる微量栄養素皮膚炎亜鉛,ビタミンA,B2,ビオチン口内炎亜鉛,ビタミンB2,B6脱毛亜鉛,ビオチン成長障害鉄,亜鉛,ヨウ素,マンガン貧血鉄,亜鉛,銅,セレン,葉酸,ビタミンB123. ビタミンK4. 鉄5. 亜鉛6. 銅D
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