3医療的ケア児の外科治療と栄養医療的ケア児の栄養管理各論末梢静脈栄養(PPN)Point 成人では消化管が少しでも利用できるのであれば,経口あるいは経腸栄養(EN)を優先させ,不足分を静脈栄養(PN)で補うことを推奨している.こどもでも同様であり,さらに末梢静脈栄養(PPN)とするのか,中心静脈カテーテル(central venous catheter:CVC)による中心静脈栄養(TPN)にするのかの適応が重要となる.成人では2週間以上のPNが必要であればTPNに移行することを推奨している.こどもも同様に2週間以上十分な経口栄養が得られない場合や2週間以上のPNが必要であればTPNの適応を考慮する. この項では最初にPPNについて,その後TPNについて述べる. 上肢の静脈の関節にかからない部分に必要最小限の太さのカテーテルを挿入する.細い血管にカテーテルを挿入すると,血流が少ないために輸液浸透圧の影響を受けやすく,静脈炎をきたしやすい.そのため,カテーテルは血流の豊富な太い血管に留置する.下肢に挿入する場合もあるが,サイズは可能な限り細いカテーテルを挿入すべきである. 静脈炎を予防するためには血清に対する輸液の浸透圧比を3以下にする必要がある.血清浸透圧は285(275~290)mOsm/Lであり,輸液の浸透圧は少なくとも900 mOsm/L以下に設定すべきである.脂肪乳剤を投与すると静脈炎を起こしやすいという話をよく耳にするが,脂肪の浸透圧は0 mOsm/Lであり,浸透圧を下げるためには脂肪乳剤を併用することが有効である. 輸液のpHは水素イオン濃度,すなわち溶液中に解離している酸を示し,輸液製剤の多くはpH6.7~6.9である.滴定酸度は溶液をpH7.4に中和するために必要な水酸化ナトリウムの量として表され,解離した酸だけでなく,解離していない酸も含めた総酸性度を示す.pHが同じで75D 医療的ケア児の栄養管理各論 ▶2週間以上十分な経口栄養が得られない場合や2週間以上の静脈栄養(PN)が必要な場合は中心静脈栄養(TPN)の適応を考慮する. ▶末梢静脈栄養(PPN)における静脈炎を予防するためには血清に対する輸液の浸透圧比を3以下にする必要があり,滴定酸度の低い輸液製剤を使用すべきである. ▶小児のTPNにおける投与エネルギー量の考え方は年齢および体重以外に成長,発育を考慮する必要がある.1. 末梢静脈ルート2. 輸液の浸透圧および滴定酸度D1 静脈栄養について
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