ランダム化試験ではビタミンCやビタミンEは精液の質を改善し,妊娠率を向上させた 5).ビタミンCは活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)を減少させ,酸化したビタミンEを再利用可能な形に還元させる.また葉酸は亜鉛と組みあわせて補給することで,総精子数が74%増加したという報告がある 6).環境毒素の影響大豆由来のイソフラボンは弱いエストロゲン活性をもつ植物由来のポリフェノール化合物で,動物実験ではイソフラボンの摂取が精子機能の低下をもたらす可能性が示唆されているが,ヒトの研究では結果が一致していない.乳製品や肉類にはホルモン残留物が含まれる可能性があるが,乳製品と精子の質の関係には研究によって結果が分かれている.健康的な食事パターンEDは心血管疾患の前兆であることが知られており,食事パターンがEDにどう影響するかの研究 7)では地中海式食事パターンと新健康食パターンが高いほどEDにかかる割合が低く,若い男性ほど食事の影響が大きかった.地中海式食事は,地中海沿岸地域の伝統的な食事パターンで,野菜,ジャガイモ,豆類,果物,全粒穀物,魚,オリーブオイルが多く,高脂肪乳製品,赤肉,鶏肉,アルコールは少ない食べ方である(図1).新健康食(alternate healthy eating index 2010:AHEI-2010)は,米国大規模疫学調査から導かれた生活習慣発症リスクの低い食べ方である.野菜(ジャガイモ除く),果物,全粒穀物,ナッツ類,豆類,オメガ3系脂肪酸,多価不飽和脂肪酸,アルコールは多く,砂糖入り清涼飲料水,果物ジュース,赤身肉,加工肉,トランス脂肪酸,ナトリウム(塩)は少ない食事である(図2).こうした食事は,低GI食であるためEDだけでなく,糖尿病発症リスクも少ない.ファストフードをはじめ,ソーセージや菓子パン,清涼飲料水などの超加工食品は,脂質や塩分,炭水化物の摂取が多くなり,加工度の低い食品に含まれる蛋白質や食物繊維,ビタミン・ミネラル類の摂取が少なく,精子の質の低下をもたらす.34038A 食事
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