2 IgG4 関連疾患(IgG4—related disease:IgG4—RD)は IgG4 が関連する全身疾患である.本疾患概念の成立の背景には,① 自己免疫性膵炎(auto-炎,後腹膜線維症,尿細管間質性腎炎などの膵外病変が全身性に合併すること3),④ これら膵外病変にも膵組織と同様に IgG4 陽性形質細胞浸潤を認め,グルココルチコイド(GC)治療に良好に反応すること2),⑤ 以上の事実より,AIP と全身に分布する膵外病変で発症に IgG4 が関連する共通の病態が存在し,これらを包括する全身疾患が想定されるようになった2)経緯がある.IgG4—RD は新しい疾患概念であり,病因,病態,診断,長期経過に関して積極的に研究が進められてきた.しかし,IgG4 の役割などまだまだ不明な点が多い.本項では上記に即して,IgG4—RD 発見の経緯,研究の歴史について概説する.1.IgG4‒RD 発見の経緯 図 1 に代表的な IgG4—RD の病変分布を示す.これらの疾患は IgG4—RD が提唱される以前からそれぞれの臓器特有の疾患名で独立して存在していたと考えられるが,一見まったく関係がないと考えられていたこれらの疾患群が本疾患概念提唱後,密接に関連していることが明らかとなった.本項では代表的な IgG4—RD である Mikulicz 病,AIP,IgG4—RD と同義と考えられている multifocal idiopathic fibrosclerosis(MIF)について,IgG4 との関連が明らかになる以前の段階での疾患概念の成立過程,IgG4 との関連が明らかになった経緯,その後の IgG4—RD が提唱された状況について,概説する.1)IgG4 との関連が明らかになる以前a.Mikulicz 病の歴史 Mikulicz 病の歴史は Sjögren 症候群との異同を明確にすることに,多くの努力が払われてきた.immune pancreatitis:AIP)で血中 IgG4 値が高率・特異的に上昇すること1),② AIP の病変組織に IgG4 陽性形質細胞浸潤を特徴的に認めること2),③ AIP には,涙腺・唾液腺炎,硬化性胆管漏斗下垂体炎肥厚性硬膜炎眼病変甲状腺疾患呼吸器病変腎病変・泌尿器病変(前立腺病変,傍精巣病変,尿管病変)後腹膜線維症動脈病変リンパ節病変皮膚病変涙腺・唾液腺病変(Mikulicz’s 病,Küttner 腫瘍)肝病変硬化性胆管炎自己免疫性膵炎(AIP)消化管病変10図 1Ⅰ IgG4 関連疾患の概要IgG4‒RD の病変分布発見の経緯と研究の歴史
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