2717小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2025年版
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第1 章基本的事項要約⿟⿟小児の便秘とは便が滞った,または便がでにくい状態である.⿟⿟小児の便秘症とは「便秘」による身体症状が表れ,診療や治療を必要とする状態である.⿟⿟小児の便秘症は病状の期間から慢性便秘症と一過性便秘症に,原因から機能性便秘症と器質性便秘症に分類される.⿟⿟小児の慢性機能性便秘症の診断基準は,国際的に使用されている Rome⿟IV 診断基準を使用する.解説排便は習慣的に行われている生理現象であり,またその習慣は個々で大きく異なる.「便秘」とは日常的に使用される言葉,概念であり,その捉え方,考え方は人によって異なるが,一般的には「便が滞った,または便がでにくい状態」と定義される.「便が滞った状態」とは,なんらかの原因によって排便回数や便量が減少した状態であり,「便がでにくい状態」とは,排便するのに努力や苦痛を伴う状態,小児では排便時の肛門の痛みで泣いたり,いきんでも排便できない,排便に時間を要する状態である.便の硬さによって便がでにくい状態になることもある.便秘「症」とは,診療や治療の対象となる“やまい(病気)”である.「便秘による症状」とは,便が滞ることによる腹部膨満,腹部不快感,兎糞状便・硬便,排便回数の減少や,便を快適に排泄できないことによる過度な怒責,残便感,直腸肛門の閉塞感,排便困難,排便時痛や出血を認める状態である小児の便秘症は,病状の期間から慢性便秘症と一過性便秘症に,原因から機能性便秘症と器質性便秘症に分類される.一過性便秘症と急性便秘症は同義語である.一過性便秘症とは,短期間で症状が改善する便秘症である.長期間にわたり持続的にみられる場合,慢性便秘症とされる.器質性便秘症とは症候性便秘症と同義語で,解剖学的異常を含む器質的疾患による便秘症で,基礎疾患・全身疾患に伴う便秘症も含まれる.機能性便秘症は器質性便秘症でない便秘症で,特発性便秘症ともよばれる.機能性便秘症では便の硬さによって便がでにくい状態になることが多い.単純性便秘や習慣性便秘とほぼ同義語である.また,上記の便秘症を一次性とし,薬剤性や器質的疾患による便秘症を二次性便秘症と分類する.本診療ガイドラインでは,慢性便秘症,一過性便秘症,機能性便秘症,器質性便秘症を用語として採用した慢性機能性便秘症では,過去に様々な診断基準が示されているが,疫学的調査や研究によって002 第 1 章 定義・分類・診断基準3).1, 2).定義・分類・診断基準

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