2717小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2025年版
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表 4-3 慢性機能性便秘症の増悪因子絶,家族における児童虐待につながるケースがしばしばみられるルの困難さ,学習困難,分離不安,恐怖症,抑うつ障害,不安障害などの心理的問題が便失禁と9, 10).一方,保護者からは,便失禁は怠惰や無頓着,あるいは関連していることが報告されている意図的なものであるとしばしば誤解されがちである.保護者は児と対立し,最終的には言葉によ8, 10).る虐待や身体的な虐待に発展する可能性がある身体所見では,腹部膨満の有無,肛門所見をみる.小児機能性便秘症の腹部診察では,視診により腹部膨満,打診により腸管ガスが貯溜したときに鼓音を認める.触診により恥骨直上に便塊による腫瘤を触知することがある.また,左下腹部に可動性良好な腫瘤を触知するときには,S状結腸に便が貯溜していることが推測される.肛門所見として,肛門の位置異常,直腸脱,見張りいぼ,裂肛,便失禁による肛門周囲の軟便付着と肛門部皮膚の状態(皮疹やびらん)を観察する.直腸肛門指診では,肛門または直腸の狭窄,便塞栓の有無をみる直腸肛門指診は患児に苦痛と不安を伴う診察手技であり,初回診察時の直腸肛門指診のために以後の外来診療での協力が得られなくなり,治療がうまく進められないことがある.患児・家族の信頼が得られたと判断されたうえで,十分な説明と同意のもと,プライバシー確保,付添者の立会,体位,患児,施行者の性別に配慮して実施されなければならない2014 年の ESPGHAN/NASPGHAN 診療ガイドラインでは,小児機能性便秘症の診断に直腸肛門12),直腸肛門指診による便塊の貯留の確認は,器質的疾患指診は有用とのエビデンスはないとしを除外する目的で行うことを推奨している.また,同診療ガイドラインでは,便塞栓の診断項目の 1 つに,直腸肛門指診による便塊の触知があったが,便塞栓は,腹部触診時に恥骨直上に便塊を触知することや腹部超音波検査,腹部 X 線検査で診断可能であると記載されている小児慢性機能性便秘症が疑われる患児に対する画像検査は安全性と簡便性が優先される.特に外来での検査が主体となるため,腹部超音波検査,腹部 X 線検査が利用される事が多い.便秘症の原因特定や腸管の形態・重症度・治療効果の評価には注腸造影検査が有用であり,器質的疾患が疑われる症例に対しては CT や MRI が行われる.1)腹部超音波検査(図 4-2,図 4-3)直腸径と直腸前壁の肥厚などが指標とされているが,小児慢性機能性便秘症を診断する基準は13〜15).患児への侵襲がなく安全に反復施行が可能で初期検査としてだけでなく,確立していない便秘症の治療経過や治療効果の判定に有用である.2)腹部 X 線検査(図 4-4)便の腸管内充満度を全体的に捉えることが可能で,治療による便塊の移動を確認できる.他病040 第 4 章 診断・検査育児・生活状況の問題便量の減少と便中水分量の減少 低食物繊維食,慢性的な脱水,低栄養,栄養失調不適切なトイレットトレーニング,トイレ嫌い,学校トイレ忌避,保護者の過干渉,性的虐待,家庭環境の変化,いじめ,など 2 身体所見 3 画像診断(表 4-4)9).背景として感情のコントロー3).12).11).

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