2717小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2025年版
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第7章維持療法4),などが作用メカニズムとして考えられている.小児慢性機能性便秘症の治療には,適切な食事と水分摂取,適度の運動が腸蠕動運動の改善に寄与し便秘解消に効果的である.また排便環境の整備も重要であり,薬物療法に頼るだけでなく,これらの非薬物療法を試みることも選択肢の 1 つである.1)食事療法便秘治療にあたりほとんどの成書に食事療法の重要性が記載されている.食事療法の継続には家族のサポートと個々に合った方法が大切となる.a.食物繊維の摂取食物繊維の摂取により小児慢性機能性便秘症が改善する十分な根拠はない(野菜,果実,全粒穀物など)と便秘の改善には必ずしも相関関係はないが,摂取量が不足してい2, 3).食物繊維は①便量増加による大腸通過時間(CTT)短縮,②発酵した食物繊維が短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する.SCFA は浸透圧増大と腸管内 pH をる場合には適正な摂取が有効とされている低下させ腸内細菌叢を変化させることで CTT の短縮,③食物繊維が水分を含むことで便性状の改b.水分摂取5, 6)便秘改善に水分摂取が有効であるとの根拠はないが,水分摂取不足が便を硬くする傾向がある.c.栄養療法赤糖,黒糖や花のシロップなどが民間療法や伝統的薬物療法として古くから便秘治療に使用さ7).含有するオリゴ糖を含む大量の糖分は腸管で吸収されにくいため①浸透圧効果で便性れているを改善,②腸内細菌叢改善により腸蠕動を促進する作用がある.過剰摂取は糖分摂取過多となるため小児では適切な摂取量に注意が必要である.d.食物アレルギー牛乳アレルギー(CMA)による便秘症が報告されておりては牛乳制限の効果が提唱されているe.食事習慣食事摂取による胃結腸反射により大腸蠕動運動が活発になる.規則正しい食事のリズムは腸の活動を促進し,排便を促すことにつながる.2)運動療法適度な運動は腸管の蠕動を促進し,便秘改善につながる可能性が示唆されるの遊びで身体を動かす機会を設けることが大事であるが,便秘の症状を緩和するために運動量を増やすことは推奨されていない3)排便環境の整備リラックスして排便できる快適で清潔なトイレ環境は便秘の予防となる.近年は教育施設でのトイレ改修が進み自宅に近い環境での排便が可能となっている.災害に伴うインフラ被害によるトイレ環境の悪化は便秘を悪化させる危険性があるので注意を要する.4)プロバイオティクス〔CQ7-4(p.110)参照〕プロバイオティクス投与により腸内細菌叢を改善することで便秘症状の改善を目的とする.ヨーグルトなどの発酵食品やサプリンメント,医薬品製剤(整腸薬)として使用されている.便秘症状8, 9),通常の治療に反応しない患児に対し1).食物繊維摂取量11, 12).小児では日常善 1 非薬物療法〔CQ7-1(p.90)参照〕10).10).基本的事項079

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