2727はじめよう骨粗鬆症治療薬 選び方と使い方
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骨粗鬆症のキホン!+3 Part1・微細構造・骨代謝回転・微小骨折 (micro crack)・石灰化度骨密度骨質骨質30%骨密度70%正常低骨量状態(骨減少) 骨密度値が T スコアで-1 より小さく-2.5 より大きい(-2.5<T スコア<-1)骨粗鬆症重症骨粗鬆症図 1 骨強度・骨密度・骨質の関係表 1 WHO に骨密度による診断カテゴリー少)」,「骨粗鬆症」および「重症骨粗鬆症」(表 1)とした.わが国では骨粗鬆症が骨折リスクを増大させ,脆弱性骨折のある例では骨折リスクが高いという事実を重視し,脆弱性骨折の有無で 2 つのカテゴリーに分けて基準を設定した(『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2000 年度改訂版』).現行の診断基準はこれをさらに改訂したものとなっており(2012 年度改訂版)(表 2),脆弱性椎体骨折または大腿骨近位部骨折を生じた例に関しては骨密度で補正したうえでもその後の骨粗鬆症性骨折の発生リスクが有意に高いことから,骨密度測定値にかかわらず『骨粗鬆症』と診断することとなった.その他の脆弱性骨折(肋骨,骨盤,上腕骨近位部,前彎骨遠位部,下腿)のある例では骨折リスクの上昇を鑑み,骨密度が若年成人平均値(YAM)の 80%未満で骨粗鬆症と診断され,脆弱性骨折のない例では YAM の 70%未満を骨粗鬆症とした.また,本診断基準の適用に『低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めないこと』が前提となっており,この鑑別が重要視されていることにも留意する必要がある.なお,T スコアは平均値に対してどのくらい離れているかの指標であり,YAM 値は日本人の 20~44 歳までの健康な成人の骨密度の平均値との比をみる指標である.海外では主にT スコアが使用され,YAM 値での評価はわが国独自のものであり,わが国では主流である.2)骨粗鬆症の薬物治療開始基準『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015 年版』に骨粗鬆症に対する薬物治療開始基準が定められた(Part 3 A「治療開始のタイミング」図 2 参照).これは骨密度と既存骨折に着目した基準となっており,上述した現行の原発性骨粗鬆症診断基準と整合している.つまり,骨の中のカルシウム量(骨塩量)骨強度 =骨密度値が若年成人の平均値の-1 SD(標準偏差)以上(T スコア≧-1)骨密度値が T スコアで-2.5 以下(T スコア≦-2.5)骨密度値が骨粗鬆症レベル(T スコア≦-2.5)で,1 個以上の脆弱性骨折を有する

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